㊟成均館スキャンダルのパラレルです。

　　本筋とは全く関係ありません。

　その日、座席に座っているユニの斜め前に、

　パクはサラリーマンの恰好で立っていた。

　雑誌を読むふりをしながら、

　バスの揺れにあわせるようにユニの座席の前に

　足を踏み出し踏ん張るふりをする。

　気配はしている。

　チラチラと写りこむ親父の身体など

　撮りたくないだろうと、くたびれた親父を

　演じているパク。

　バスの後ろの方に乗っていたジュンボクは、

　パクが時々投げる視線の先に注目していた。

　スマホをいじっている人物は何人もいる。

　イヤホンをつけている若者や、

　何かを必死に打ち込んでいる女子学生などは

　除外してもいいだろう。

　そうやって一人一人除外していくと、

　二人ほど不審な男が残った。

　しかし、一人はすぐに、仕事のやり取りで

　スマホを近づけたり遠ざけたりして悩んでいるとわかり、

　ようやく絞られた一人にジュンボクは集中した。

　３０代初めくらいの男。

　カジュアルなジャケットコートを羽織り、

　ショルダーバッグを斜めにかけている。

　さっきからスマホを出して吊り革を持つ手の辺りに

　掲げてはまたおろし、を繰り返していた。

　スマホのカメラの方向は、ユニの座っている辺りを

　狙っているのが分かる。

　犯罪者の香りはしない。

　おそらく記者だろう、と見当をつけたころ

　ユニがいつも降りるバス停に着いた。

　ユニは軽やかにバスを降り、

　少し上りの坂をマンションへと向かう。

　パクは一緒に降りて、間をおいて後をついて行った。

　男は降りずにいたので、ジュンボクも降りなかった。

　手元でスマホを操作する。

　このままつけてみる。

　そう送って、ジュンボクはちょうど空いた席に座った。

　男はそれからスマホを一切出すことなく、

　小さなビルやオフィスが多い地域のバス停で降りた。

　ジュンボクも一緒に降りる。

　ジュンボクは今日はダウンジャケット姿。

　手にはセカンドバッグを持ち、

　小さな工場の社長のような恰好。

　男はそれほど歩くことなく

　小さな二階建ての雑居ビルに入っていった。

　そのビルに入っている会社は、と

　ジュンボクは郵便受けを確認した。

　会社名などはどこにも書いていなかったから。

　一階は、小さな会計事務所。

　二階は、出版社の名前が書いてあった。

　ジュンボクは郵便受けのその名前の部分を

　スマホで写し、足早にビルの前を離れた。

　事務所で落ち合ったパクから

　ユニは無事にマンションに入った、と聞き、

　ジュンボクは写真を見せながら報告する。

　バスの中でこっそりと横顔だけを撮っていた。

　その男の顔と共に、出版社の郵便受けの写メも

　トックに送った。

　「御嬢さんも大変だな。」

　「本人があまり周囲の視線に

　　気づかないタイプだから、

　　彼氏がオロオロするんだ。」

　「ということは、彼氏が大変なんだな。」

　「美人の恋人ってのも気を使うな。」

　「しかし、あんな品行方正な御嬢さんを

　　追ったって、面白いことなんかないだろう？」

　「多分、ク・ヨンハさんと会ってるところなんかを

　　狙ってるんだ。そのうちマンションの周りで

　　張り込みし始めるぜ。」

　「もう、マンションはつきとめているだろうしな。」

　後は指示待ちだな、と

　ジュンボクとパクは解散した。

　トックはジュンボクからの報告を

　ヨンハにみせていた。

　「暇なんだな。」

　と顔をしかめたヨンハ。

　「家族と同居。

　　毎日勤めている社会人。

　　夜遊びなんかしない。

　　帰宅途中に寄るのは近所のスーパー。

　　恋人は週一で訪ねてくるが、

　　付き人が一緒か、弟が家にいる。

　　デート先は人の目があるところばかり。

　　何の話題にもならんのにな。」

　トックは、ゴシップ誌の記者は

　ユニとのことが記事がのり始めてから

　ある程度調べ上げていた。

　それまでの女遊びの時にはなかったこと。

　ほっとけよ、としか言わないヨンハ。

　知らん顔をしていた会長。

　しかし、ユニに関して、ヨンハは敏感に

　ネットやゴシップ誌の記事に反応する。

　セキュリティをつけてやれ、といったのも

　会長からだった

　「このまま警護を続けてもらってくれ。

　　なるべく写真は阻止するように。

　　まだ送迎をするわけにはいかないからな。

　　ユニさんの仕事に影響が出る。

　　それから・・・。」

　ヨンハは横を向いてすねたように言った。

　「あの、キム・ジェジュンという男は

　　ユニさんについてないだろうな？」

　ジュンボクさんと、ジュンボクさんと同じぐらいの歳の

　パクさんという方ですよ、と

　笑いながら言うトックに、

　分かったからもう行け、とヨンハは手を振った。

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ROSE～春への準備 その１５ ヨリユニパラレル～

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