㊟成均館スキャンダルのパラレルです。

　　本筋とは全く関係ありません。

　ユニの手には食パンの袋。

　ヨンハの手には菓子の袋。

　その後ろから歩くトックとユンシクは、

　野菜や肉、洗剤も入った大きな袋を

　持たされていた。

　「いつもよりましだよ。

　　トックさんが一つ持ってくれてるから。」

　助かります、と笑うユンシクに、

　トックは頭を軽く下げて謝った。

　「もう一人、男手があるのに、

　　ユンシクさんまで来られることなかったですね。

　　申し訳ありません。

　　気が付かなくて。」

　「僕が留守番してたら

　　この袋もトックさんが持たされてたよ～！」

　とユンシクが笑う。

　そうでしょうね、とトックも笑うしかなかった。

　スーパーの前で待っていると、

　大きな袋を二つ抱えたヨンハが、

　えっちらおっちらと出てきて、

　きょろきょろとするのが見えた。

　面白いので見ていると、

　すぐに出てきたユニが、

　ヨンハの持つ袋を一つ持とうとするので、

　トックとユンシクは笑っていられなくなり、

　慌ててヨンハとユニの側に行った。

　当然のように大きな袋を二人に押し付け、

　パンパンと手を払ったヨンハは、

　ユニの方を振り向くと、

　ユニが持っていた軽い袋を一つ取り上げた。

　「今日はユニさん特製のハンバーグだ！

　　材料が入っているから、落とすんじゃないぞ！」

　さ、とユニの手を握り歩き出すヨンハ。

　ユニは振り向きながら、

　重いのにごめんなさいね、と眉を下げている。

　握った手を振り振り、

　持っている袋を振り振り歩く二人の背中は

　とても楽しげだ。

　重い重いと言いながらも、

　ユンシクとトックも笑顔で歩いていた。

　マンションに帰りついて買ったものを

　片付けている間に、ユンシクがコーヒーを淹れた。

　それを飲みながらリビングでソファに座った

　ユニとヨンハ。

　ユンシクとトックは、どうせビールがいるって

　言うよね、と、もう一度買い物に行くことを

　覚悟しながら、テーブルでコーヒーを飲んでいた。

　「あのね、ヨンハさん！」

　楽しそうにユニが話す。

　「4月から、園で英語を教えるの！」

　そう言えば言ってたね、とヨンハが応じた。

　毎晩の電話で聞くユニの日常。

　その中にあった話の一つ。

　「私の勤めている幼稚園はね、

　　もう一つ系列の園があるの。

　　そこの子供たちにも教えるのよ。

　　一クラス、一週間に一コマ。

　　月曜と火曜は系列の幼稚園に。

　　後は今いる本園で。」

　今準備中よ、忙しいの、と

　ユニが笑う。

　その微笑みは充実感に満ちていた。

　「じゃあ、俺と遊べなくなるの？」

　と覗きこむヨンハに首を振ったユニ。

　「お休みがなくなるわけじゃないもの。

　　園での主な担当が変わるだけよ。」

　「でも、任されたんなら責任重大だ！」

　「園のウリになるかもしれないでしょう？

　　それに、評判が良かったら、

　　新しく採用する職員に、英語教諭の資格を

　　持つ人を優先するかもって。」

　トックとユンシクが声をかけた。

　ビールを買ってくるという二人に手を振って

　追い払い、二人っきりになったヨンハは、

　ユニの腰を抱き、手を握り、

　唇をユニに寄せた。

　大きな仕事を任されて輝くユニ。

　誇らしいとともに、どうしようという気持ちも渦巻く。

　これからの二人の話をしたいのに、

　ユニは新しい使命に進んで行っている。

　ヨンハ自身だって、一つ父の座に近づく階段を

　登ることが決まっているのだ。

　気持ちは寄り添っている。

　たぶん。

　でも、俺と一緒に、ずっと、という道を、

　今、ユニさんに言えやしない。

　だからユニさんの身体に覚えてもらう。

　俺の感触を、香りを。

　俺の唇を。

　俺の目を見たら、俺の声で未来を語ったら

　心も体も俺の方を向くように。

　唇は首筋を降り、

　セーターのネックを押し下げた。

　ユニの香りが温かく振りまかれる。

　その暖かなくぼみにヨンハは印をつける。

　トックとユンシクが帰ってきたとき、

　ユニは玉ねぎを刻んでいた。

　腰に巻きついているヨンハを、

　二人で引きはがさないと、

　玉ねぎのみじん切りは

　いつもより荒くなっていただろう。

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ROSE～春への準備 その１０ ヨリユニパラレル～

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