恋人よ その65 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「しかしまあ、随分吹っ切れた顔してるな、コロ。」

 

 優雅にコーヒーをすすりながらヨンハがしげしげと見て来る。ジェシンは顎をするりと撫でた。吹っ切れた、という言葉が会っているかどうかはわからないが、確かにジェシンの心境は落ち着いていた。一本芯が体に通った気がしている。

 

 「悟った~?」

 

 とからかい気味に煽るヨンハに、まあな、と返事してやると、からかったつもりのヨンハが逆にびっくりした。

 

 「え?え?コロが俺を殴らない・・・?」

 

 「殴ってほしいのか?」

 

 やだやだ、と手を振って後ずさるヨンハを見ながらコーヒーをすする。うるせえやつだ、毎度毎度、と思う。昔からだ。出会った中学生の時から。ああ、そういやこいつだけ夢に出てこなかったな。ヨンハとの付き合いは今生からなのか、と思った。

 

 見続けていたデジャブや夢の話は、先祖を調べるためにソンジュンに少し漏らした以外にはしゃべっていない。ソンジュンは口の堅い男だ。多分よほどのことがない限り誰に喋ることもないだろう。信用という点では誰よりも安心できる男なのだ。

 

 ソンジュンは夢に登場していた。儒生仲間として、そしてジェシンの戴く王として。ジェシンに依頼されてから李王朝の家臣団に興味を持ったらしく、本業以外で楽しく調べ続けているらしいソンジュンから時折報告が来るが、ソンジュンの家系もジェシンのムン家に劣らず古いらしく、権力の強い場にずっといたらしい様子なので、おそらく王族のイ家の血もまじっているに違いない。ソンジュンに似た王もいたのだろう、と想像できる。

 

 ヨンハとの戯言はその程度で終わり、しばらく経った頃、ユニと夢のことで喋ることがあった。ユニはジェシンが傷の診察や、内臓への影響がない事を確かめるための検査などの時には必ず有休をとってついてきた。手をつなぎながら待合室で座っているとき色々と話をする。そんな時、そう言えば、とユニが笑った。

 

 夢を見たという。儒生時代の夢。ジェシンが見た、腹を負傷した場面ではなく、普通にいわゆる学生生活をしている場面だったそうだ。

 

 「ヨリム先輩がね、出てきたの。サヨンの親友だったわ。同じような服を着てるのに、何だか妙に豪華?上質?に見えるのよね。つやつやした服なの。私にお菓子をくれていたわ。やっぱりお金持ちなんでしょうね。」

 

 想像して笑ってしまった。ジェシンもユニもソンジュンも、確かにその性質はデジャブでも夢でも変わっていなかったが、その時その時で立場や地位などが違っているのに、ヨンハだけは何だか全く変わりがないようなのだ。流石、流石だ。俺の親友だよ。

 

 「あいつは・・・いつの時代でも、金をもってて商才があって、愛想だけは良くて、ちゃらちゃらと女性の尻を追いかけるやつなんだろうなあ・・・。」

 

 笑うジェシンに、失礼よ、と言ってユニも一緒に笑っている。

 

 「でね、何かをサヨンに言って、背中をどんと叩かれてたわ。」

 

 ほら見ろ。全然変わってねえだろうが。

 

 

 

 ヨンハに指摘された通り、ジェシンは吹っ切れたのだろう。自分が生きる意味、それがはっきりしたからだ。いや、今までだってはっきりしていたはずだ。だがここまで・・・そう精神世界に至るまで自分の使命が決められているとは思っていなかっただけだ。

 

 不満はない。自分が望んでいたことだからだ。愛する恋人を守って生きる。ジェシンの魂に刻まれた愛の塊であるユニという存在を守れと、何生もの過去のジェシンが教えに来たのだ。ジェシンがはっきり自覚したとたん出てこなくなったのは本当に自分らしいが。面倒なことが嫌いな性質は変わらないらしい。チャラいヨンハと一緒じゃねえか。

 

 ユニの前世たちはまだユニに自分たちの過去の姿を見せているらしい。どうか楽しい、幸せな人生を送ったと教えてやってほしいと思う。

 

 ユニがジェシンを愛していてくれる限り、ジェシンがユニを愛する気持ちは邪魔になっていないはずだ、重荷ではないはずだ。命がどちらかが先に途切れるのは、命あるものの定め、仕方がない話だが、たとえ一人残されたとしても、愛し愛された記憶でその人生を過ごせたはずだ。

 

 ユニ。俺の恋人よ。

 

 さあ、これからの人生を俺と。

 

 

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