恋人よ その53 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ジェシンの父の意向で、ジェシンの意識回復を見守るのは、家族とユニだけという事になった。医療関係者でもない人間がうろうろとしているのは邪魔になるという意見に、ヨンハも従うしかなかったし、実際ヨンハやイ所長には他にやるべき事があった。今回の傷害事件の関係者なのだ。現行犯の男からはぽろぽろと供述が取れ始めており、ヨンハ達も警察からの事情聴取は受けねばならなかった。

 

 静かになった病室は個室だった。これはヨンハが病院側に頼んで入れてもらったのだ。

 

 「コロが狙いだったとは思えないんです。今回狙うなら俺でしょう。俺の個人的な好悪が今回の提携破談の結果を産んだことは相手側も知っていますからね。」

 

 とヨンハは冷静にジェシンの父に告げた。

 

 「詳細は事情聴取で話したまえ。儂はここの仕事に首を突っ込むことはしたくない。」

 

 「はい。お立場は存じてます。ただ、被害者の身内として概要を知っておいていただきたいと思います。」

 

 そしてヨンハは、今回の提携相手が元からいい印象を持っていない企業が相手だったこと、内情を調べてますます手を組みたくなくなったこと、提携しないと決断したことは企業としての損得を考えた結果だが、そこに個人的感情がなかったとは言えないし、伝わっていたのだろう、と言った。何しろ。

 

 「隠していませんでしたから。学生時代から宣言していました。この会社のやり方も経営者も嫌い、その息子である同級生も気に食わないってね。実際少し揉めたこともありましたし。不仲なのは明らかだったでしょう。」

 

 そういうヨンハに、

 

 「ジェシンも君の気持ちは分かって仕事をしていたのだろうから、君のせいではないだろう。それに多分・・・この中で一番体が先に動くのはジェシンだよ。君たちが体を躱すより自分が動く方が速かったんだろうよ。」

 

 「それは確かに!」

 

 とその時突き飛ばされたイ所長は笑った。

 

 「私を突き飛ばして、カバンを胸に押し付けるようにされて、犯人から距離をとってくれたんです。間にジェシン君は入り込んでくれてましたからね。彼のそのワンクッションのおかげで、ヨンハ君のSPが駆けつける時間が出来たんでしょう。」

 

 「コロ先輩が一番運動神経いいもんね・・・。」

 

 「テムル・・・ちょっと傷つくんだけど。」

 

 「ジェシンはずっとテコンドーをしていたからね。幼いころからどんなスポーツでもできる子だったよ。」

 

 にこにこと兄のヨンシンが笑って、そして穏やかに皆を促した。さあ、あなたたちも疲れただろうから一旦休んで、お母さん、ソファで横になりましょう、お父さんも仕事場に連絡は入れなくていいんですか、ユニさん、何か飲み物と食べる物を買いに行きましょう、と指示を飛ばし、ヨンシンとユニに見送られてヨンハ達は病院を後にした。

 

 車の中から手を振るユニとヨンシンの姿が見えなくなるまで振り返った後、ヨンハは真顔に戻りイ所長に話しかけた。

 

 「単独犯だと思いますか?」

 

 「思わないね。多分示唆されているだろうね。」

 

 「吐きますかね。」

 

 「捜査員がどこまで視野を広げて尋問しているかによるだろうけどね。とにかく、何の立場で恨みを持ったのか、という事が分かるかだろうね。」

 

 「俺の大事な親友を・・・。と俺は燃えるところなんでしょうけどね。そういうポーズはなしにして、冷静に詰めるべきですよね。」

 

 「ははは。燃えた方が格好いいかもよ。」

 

 「コロに嫌な顔されちゃう・・・。」

 

 「先輩、気持ち悪いです。」

 

 「えっ?!可愛くない?!」

 

 「可愛くないです。」

 

 ヨンハのおどけに少し笑えた。すると車内はすっと空気が軽くなり、そしてまたヨンハは真面目な声に戻った。

 

 「俺とコロは戦う土俵が違うんだよ。だけど、違う立場から違う目線で、俺たちはお互いを尊重し合ってきた。コロが傷つけられたら、俺がやっぱりカバーしないとね。だってコロは、俺たちをかばってくれたんだから。守ってくれたんだから。おかげで痛い思いをしなくてすんでる。」

 

 先手を打つ、そうヨンハは宣言すると、第一秘書に連絡するようユンシクに命じた。

 

 

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