極秘でおねがいします その77 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「久しぶりだね、ユニさん。」

 

 「本当にお久し振りです。」

 

 お互いに簡単な挨拶を交わして、ソンジュンとユニはにっこりと笑いあった。それだけで再会は完了したようだった。

 

 いろいろ謝りたい事や言いたいことはあるだろうが、そこには二人とも全く触れなかった。ユニさんが作家をされてるなんて、とソンジュンが笑うと、ソンジュンさんは信念のままにお勉強を続けておられるのね、とユニも頷いている。静かに、和やかに再会が進んだのは、この二人の理性のおかげだろう、とジェシンは二人を見て納得していた。

 

 ソンジュンはあまり人付き合いのいい男ではない。冷たいわけではないが、親しくない人を簡単に『友達』と呼べない、という事を言うような人間だ。同じゼミに所属しているとしても、それはゼミの『同級生』なだけであり、学ぶ『仲間』ではあっても『友人、友達』と名のつく心を許した相手ではない、というわけだ。いわば所属名のつく『知り合い』とがほとんどで、彼の思う『友達』というのは限られていた。ユンシクがそうであり、高校時代の同級生の数人、そしてジェシンやヨンハ、ユニなど大学で知り合い交流が深まった者たちだけが彼の『友達』という枠の中に入っているだけだ。

 

 大学時代のソンジュンとユニの関係を勝手に曲解した騒ぎのせいで、その『友達』枠からユニが外れてしまったわけではない。逆に迷惑をかけたせいでユンシクやユニとの関係が悪くなるのが嫌だとソンジュンは父親を動かしてまで騒動の鎮静を図った。その気持ちはなくなっていない。ソンジュンの中ではユニは変わらずにその場所を持っている。そしてそれはユニにとっても同じようだった。

 

 ジェシンとユニは少しずつ学生時代の話も含めてお互いのことを話している。ユニもバイトに忙しい学生で、それほど『友達』の多い方ではなかった。学部、学科、ゼミなどで知り合いは何人もできたが、親しくしている友人はほんの一握り。だから逆にどうして自分がそんなに注目されるのか、自分のことをまるでよく知っているかのように噂の種にされるのか理解できなかったという。そのデマが広がるさまが怖かった、人というものが怖くなった、と言っていた。数少ない友人も、一人を除いてはあまり関わってこなくなった状態でユニの大学生活は終わったのだ。だからユニの『親友』はたった一人、だという。

 

 一人居りゃ十分だ、先輩は何人もいるでしょ、そんなことあるか今でも連絡とって会おうか、なんて付き合いを続けてる奴なんて・・・ひとりぐらいだろ、ああ、ク・ヨンハ先輩・・・ふふ先輩なんて顔してるの、あいつが親友枠に入っていることがどうも腹が立つ、そんなこと言ったらかわいそうだわ、かわいそうなもんかヨンハなんぞ。

 

 ユニは自分の職業は隠してその『親友』とは連絡を時々とっているという。相手は早々と結婚して婚家の家業を手伝い、子育てもしているから忙しいそうだが、時折交わすLINEでの会話でお互いを励まし合っているのだ、と嬉しそうに言っていた。誰とも関係を断ち切ったと思っていたジェシンだが、正直、ユニにも、仕事関係での前編集者ぐらいしか親しいものがいないわけではない、と分かってほっとしたのだ。

 

 どんなに強がっていても、自分を認め、話が出来る相手がいるのといないのとでは大違いだ。

 

 ユニにとっても、本来はソンジュンとの関係は穏やかで楽しいものだったはずだ。弟ユンシクの信頼する大事な親友。自分にも正しい態度で接してくれるソンジュンは安心して会える人だったはずだ。だからこそ、そのことをちゃんと思い出して、穏やかに再会を喜び合えたことに、ジェシンはほっとした。

 

 少しばかり妬けはする。ジェシンは学生時代、ソンジュンのようにユニと関わり合えなかった。それは学年差のせいでもあったから仕方がない。だが、思い出を持っていることは単純にうらやましい。

 

 けれど、ユニがこれから様々な関係を修復していくのに必要な第一歩を、作家の仕事のためという理由はあるにしろ提供してくれたソンジュンに、不服など言えるわけはない。

 

 

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