極秘でおねがいします その68 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ユニがしたいと思う、と言うと、それは必ずしなければ納得しないことだ。徹底的に資料を読み込み、たとえ取材旅行などが多くはなくてもきちんと登場人物の生きる時代のこと、その境遇の周囲にある事柄も組み立てているからこそ、ユニの作風は人物描写が鮮やかに浮き上がっている。どの時代、どの年代の主人公の時もそうだ。勿論小説はドキュメンタリーでない限り作家の頭の中のものが表に出てきた空想の産物だ。だが、それが生きているかそうでないかに作家の力量がかかる。ユニの描く主人公たちの姿の鮮やかさは、ユニの徹底した人物像とその舞台づくりの上にあるのだ。

 

 だから、その作り手であるユニが首を傾げたら、そこには何らかの設計ミス、または、思わぬところに現れた隙間、問題があるという事だ。そこは埋めなければ、後でどうメンテナンスしようと欠陥品となってしまう。それを気づいていてユニが放っておくわけもない。

 

 実際、ジェシンがユニに、その食生活はすぐ始めるか、と聞いてみたところ、雑穀なんかは手に入るんです、という返事がすぐさまかえってきた。ユニは既に着手し始めている。

 

 「そんなに多種多様なメニューがあるわけはないので。普段は朝、晩の二食、たいしてお菜などはなくて、粥を煮て、その上に自宅で手に入るもので作る漬物や佃煮、キムチなんかを載せて一椀食べるのが貧しい民の暮らしの様です。野山で採る木の実・・・アケビやクリ、棗、山りんご山ブドウ、柿などは、その季節に生で食べる以外に干したりしていたようですね。売ることもあったようです。梅やモモは贅沢な果実で、柑橘類は総じて高級品。肉類を毎日とることなどはなく、地方なら川魚が動物性の食べ物としては手に入りやすい。牛、豚は平民はほぼ食べられない、鶏肉が一番手に入りやすいようですね。タンパク質としては卵、小魚、そしてごちそうとして鶏肉、ってところでしょうか。」

 

 料理法も煮るか焼くか蒸すか、とぶつぶつノートをめくるユニの視線の先には、少ないと言っているメニューが多少あるのだろう。ジェシンは面白くなってきて、うん、と頷いた。

 

 「俺も材料をどうにか手に入れるようにするよ。雑穀はある、じゃあ俺は何を探せばいい?」

 

 「えっと・・・干した木の実は実物を見てみたいです。できたら食べてみたい・・・。それからやっぱり、雑草類は手に入りにくいの、季節のものじゃなければ余計に・・・今は初夏だから、今草摘みできるものを・・・。」

 

 今度はタブレットを出してきて、ユニは季節の野草を検索しだした。

 

 オオバコ ナズナ ヨモギ セリ ヒユ フキ ドクダミ つくし ゼンマイ へびいちご・・・

 

 「・・・案外あるんだな・・・。」

 

 「セリは今でも食べますね。」

 

 「チゲに入ってるもんな。」

 

 「でも他は・・・しいて言うならドクダミを漢方のお茶として知っているぐらい・・・。」

 

 「見ろよ、他の草も漢方の材料だぜ。」

 

 「ホントだ・・・。でも、食べられるものは何でも利用したわけだから、取り合いだったんでしょうね、飢饉のときなんかは。」

 

 「だろうな。」

 

 顔を突き合わせて小さめの画面を覗き込み、二人でうんうん納得した後、今度は果実を調べてみた。こちらはドライフルーツで見てみると、代表的なレーズンなどだけでなく、一般的な果物も多くドライフルーツ化して売っているのだと分かった。

 

 リンゴもひまわりやカボチャの種も手に入る、棗も、イチジクやイチゴも取り寄せることにし、後は野草だけだ、という事になった。

 

 「ソウルだって周りは山に囲まれてるんだ。俺の実家も坂の途中にあって、庭の草取りに人に来てもらってたぞ。」

 

 とりあえず一週間後から、主人公の少年時代の食生活を再現してみよう、という事になり、どうしても手に入らなければスーパーで買える安い青物を使ってくってみよう、と決めて、その時に初めてユニはきょとんとした顔をした。

 

 「先輩、一緒に食べるの?こんなおかゆばっかりのメニューよ?」

 

 

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