この記事では,公務員試験専門記述試験における現実的な答案例を掲載しています。

学問的に説明が不十分な点があることは承知の上で答案を作成しています。一応の参考資料として役立ててください。

【問題】

職業選択の自由の意義について説明した上,職業選択の自由に対する規制の合憲性を判定する基準について論ぜよ。

(平成30年裁判所職員専門記述憲法)

【論述例】

 まず,職業選択の自由の意義について,職業選択の自由とは,国民が従事する職業を自由に選択する自由のことをいう。また,従事することを決定した職業を遂行できなければ職業選択の自由を保障した意味がなくなるため,職業遂行の自由も保障されている。

 次に,この職業選択の自由に対する規制の合憲性について,職業活動は,表現の自由などの精神的自由に関する活動と異なり,公共の福祉による制約の必要性が高い。例えば,国民の生命や健康を保護するなど,自由な職業活動によりもたらす弊害を防止したり,零細事業者を保護するために競争制限を行ったりする必要性がある。また,裁判所としても,経済政策に関して判断する専門的な能力を有していないため,立法府の裁量を尊重する必要がある。そこで,精神的自由権の規制による場合よりも緩やかな審査基準により審査すべきである。

 具体的には,規制目的が消極目的規制である場合は,規制目的が重要な目利益を達成するためであり,手段が当該目的との関係で必要性・合理性が認められ,かつ,他に選び得る手段が存在するかどうかを審査するべきである。

 一方,積極目的規制である場合は,正当な利益を達成するためであり,手段が目的との関係で著しく不合理であることが明白であるかどうかを審査すべきである。

 このように目的を分けて考察する考え方を規制目的二分論というが,全ての規制がこの2つの目的に分けることができるわけではない。例えば,公衆浴場法に基づく距離制限規定については,消極目的と積極目的とが混在しているといえる。

 また,この二つの目的以外の目的による規制もありえる。例えば,租税目的のための酒類販売免許制が国家の財政目的のための規制であるといえる。

 そこで,目的のみによって違憲審査基準を決定するのではなく,規制態様の強度も考慮して違憲審査基準を決定するべきである。

(772文字)

※ポイントなどの解説は,時間があれば改めて掲載します。