日本の閉塞し切った状況。

バブル経済が終わり、それに危機感を抱かず自分の私利私欲におぼれ続け、日本を崩壊寸前に追い込んだ日本の為政者達。

主犯は、こういう庶民の救済より自分の私利私欲におぼれ続けた日本の為政者であると言うのは正しいと思う。

ただ、こういう劣悪な日本の為政者と同罪と言っても過言ではない人種がいる。

それは、マスコミである。

日本のマスコミの状況を知っている方は、日本のマスコミを「マスゴミ」という呼び方をする人がいるが、それも的を得ていると言わざるを得ない状況である。

権力の一極集中は、その集団の腐敗を招く。

それが人間社会の世の常。

その為、日本は三権分立という分散する権力機構を敷いている。

司法・立法・行政の三権である。

ただ、この三権は権力の分散を促進するが、権力同士手をつなぎ三権で権力を独占すると言う危険性を孕(はら)んでいる。

それだけ、権力はうまみがあるし、この三権は権力の分散よりも集合して独占しやすい性質があるからである。

ただ、その三権の権力独占に歯止めを掛けれる分野が一つだけある。

それは、マスコミである。

マスコミは、正義を貫き不正や悪を倒すために成立した稼業。

その影響力は計り知れない。

だから、三権分立にプラスして、

「第四の権力」

と呼ばれる事もある。

ただ、日本の今のマスコミはどうであろう。

骨太なジャーナリストもいるが、その数は驚くほど少ない。

それも、日本のマスコミは大手ではないと取材機会も無く信用も無い。

腐敗権力側が、そういう体制を作ったのだが、それに組して日本のマスコミは正義を貫く事や不正や悪を倒すのではなく、腐敗権力側の「御用機関」として、腐敗権力側のマインドコントロールの嘘の情報を垂れ流す事に全力を注いでいる。

だから、今の日本のマスコミの中で骨太のジャーナリストが生息できるのは、大手ではなくマイナーな会社だけになってしまう。

しかし、日本にも以前は大手においても骨太なジャーナリストが確かに存在した。

それも、そんなに遠い昔ではない。

また、それが讀賣新聞に存在したと言う事は、今となっては驚きとしか言いようが無い。

今回紹介するのが、本田靖春という硬骨漢。

1933(昭和8)年に生まれ、2004(平成16)年の師走に71歳で亡くなったジャーナリスト。

早稲田大学政経学部を卒業後、讀賣新聞に入社。

社会部に配属された。

当時の讀賣新聞社会部は、今では全く影も姿も無いが、反骨のジャーナリスト集団として権力層に蛇蝎(だかつ)の如く嫌悪感を抱かせる位の本筋のリベラリストであった。

その風土に勇気と心地良さを感じた本田は、元々備えていた正義感を発揮し権力層の眉をしかめさせる数々の問題作を発表した。

特に有名なのは、

「黄色い血追放キャンペーン」

である。

日本の献血制度を根こそぎ改革したキャンペーン。

昭和30年代当時、日本の献血制度は驚く事に売血で行なわれていた。

しかし、その売血状況は劣悪なものだった。

注射針は使いまわし。

売血常習者に、それを処理させる制度が頑健に作り上げられていた。

金に困る人に売血を促し、安い金で血を買い取る。

その金に困っている人は、安い賃金とはいえ常習的に金が手に入るとそれを常習する。

それが健康に良くないと知りつつ、献血業者に監督官庁の当時の厚生省は眼を瞑(つむ)ってきた。

その売血常習者は、売血を重ねるごとに血液の色が薄くなり黄色くなることから、これを打破して改善しようとした本田が先頭となって戦ったキャンペーンを「黄色い血追放キャンペーン」というのである。

本田は、売血の総本山、東京のドヤ街・山谷に潜り込んだ。

売血常習者と同じような風体に扮装し、売血の実態を探るべくち自ら売血の常習を実行した。

そこは、修羅の世界であった。

売血をしないと、生活が出来ない売血常習者。

そこにつけ込み、安価で売血をさせるモラルの無い業者。

副産物的に、ウィルス感染も頻発。

それを手術で利用するので、血液感染をしてしまう事を食い止める事が出来なかった。

その惨状を体験した本田は、朦朧とする体力の中、その問題を讀賣新聞紙上に発表し社会問題にすると共に、厚生省に乗り込み官僚トップに直談判(じかだんぱん)する日々を続けた。

最初は、頑(かたく)なにそれを拒否していた厚生省も、無名の本田の狂気のような執念に折れていった。

そして、1969(昭和44)年、売血が根絶。

そして、1974(昭和49)年に、現在の世界でも屈指の献血制度が確立されたのである。

数年前は世界でも屈指の劣悪な売血制度であったのに、本田を中心にする正義への厚い思いと執念で数年後には世界でも屈指の安全性を誇る献血制度を確立させるまで動かした。

その運動は、苛烈を極めた。

暴力団の資金源なので、命の危険性も日々感じなければいけない。

それにも増して、国に喧嘩を売る事自体それ以上の危険性を感じる日々を過ごす事になった。

しかし、若き無名記者・本田は屈しなかった。

ただ、その勇気の源泉となった讀賣新聞社会部も状況が変化してきた。

端的に言えば、御用機関と成り下がってしまったのである。

本田は、そんな中では目障り過ぎる。

実績に反し不遇に見舞われるが、安定した大手新聞社・讀賣新聞社員の地位を投げ打ち、退社してフリーとなった。

フリーとなっても、その反骨の姿勢は崩さず数々の問題作を世に出した。

知名度も上がり、現場に立たなくても大金が舞い降りる立場にいながら現場にこだわり、金銭蔑視の姿勢も崩さなかった。

それを本田は自嘲気味に、

「由緒正しき貧乏人」

と自分自身の身の処し方を評した。

それに、嘘偽りはなかったようである。

屈指のジャーナリストなのに、ずっと安い賃貸で家族を暮らさせ、晩節にやっと安い一軒家を購入。

生活も、慎ましやかであったと言う。

その壮絶な生き様は、人生最後の著書となった「我、拗ね物として生涯を閉ず」である。

最終回を残して、本田は天に召されてしまう。

その間、本田は糖尿病による両足切断、右目失明、肝臓癌、大腸癌に犯されしばしば連載は中断するが、全くへこたれず魂の乗り移った文章を書き続けた。

渾身の文章は、鳥肌が立つ。

本田入社当時の讀賣新聞社会部は、上に噛み付く事を由とされた本質ジャーナリズム魂が流れていた集団であった。

下のものが上のものの不正や横暴には、警笛を鳴らす事が一人前と言われた。

一番忌(い)み嫌われたのは、媚(こ)び諂(へつら)う事。

現在の日本のマスコミの体たらくを知る私達としては、この本田及び当時の讀賣新聞社会部の清廉な反骨心は潔く見えるが、これこそが真のジャーナリズムそのもの。

その為に、成立したのがマスコミである。

それを少しでも逸脱したり権力の御用機関となったら、庶民は奴隷と扱われ人として生きれなくなってしまう。

そんな状況が、現在の日本なのである。

今の日本に、人権はあるだろうか?

冷静に考えれば、そんなものは存在しない。

つまり私達日本の庶民は、日本の為政者やマスコミの奴隷。

悲しいけれど、それが真実なのである。

さらに、その日本国はアメリカの忠犬にして奴隷。

身分に貴賎は悲しいけれどこういう風に存在するが、人間性には貴賎は存在しない。

ただ、こんな日本にも身分の貴賎を廃止できる力が存在する。

それが、マスコミである。

本田のような真のジャーナリズムを持ったジャーナリストが何人も現れればそれも夢ではないと思いたい。

本田は「黄色い血追放キャンペーン」の潜入取材での売血で注射針の使いまわしでC型肝炎に感染し、その原因となった疾病のオンパレードに苛(さい)まれた。

それを、本田は自覚していた。

しかし、本田は信念を貫き通した。

正義を問うために。

先程も紹介した未完となった本田の遺作「我、拗ね物にして生涯を閉ず」の一説で、本田の弟子を自認する大谷昭宏氏のHPにても紹介されていました。

それが、本田の生涯を端的に言い表し、現在の日本の腐敗し切ったマスコミに考えて欲しい内容だったので、載せて終わりにしたいと思います。

私は世俗的な成功より、内なる言論の自由を守り切ることの方が重要であった。私は気の弱い人間である。いささかでも強くなるためにこの時、自分に課した禁止事項がある。それは、欲を持つなということであった。

 欲の第一に挙げられるのが、金銭欲であろう。それにと次ぐのが出世欲ということになろうか。それと背中合わせに名誉欲というものがある。これらの欲を持つとき、人間はおかしくなる。いっそそういうものを断ってしまえば怖いものなしになるのではないか。

 いかにも私らしい単純な発想だが、本人としては大真面目であった

どうであろう?

これがジャーナリズムであり、これが弱い立場の庶民を守り権力を独占し不正濫用しがちな三権に警笛を鳴らせる「第四の権力」マスコミの真の生き様。

低調な日本の行く末を握っているのは、マスコミ。

高軌道になるのも低軌道になるのも、マスコミの信念次第。

「日本を良くしたい」

そう思うのであれば、この本田の生き様を見よ。

そして、この生き様の爪の垢を煎じて邁進する。

それで無ければ、日本のマスコミは日本崩壊の戦犯そのもの。

これを実行できなければ、太平洋戦争を手助けした御用マスコミと何ら変わりなく存在価値の無い「マスゴミ」と言われても文句は言えない。

本田の生き様が、現在の日本に警笛を鳴らしている。

それを理解して、日本のマスコミは身を処して欲しい。

私は、日本が再び良い国になって欲しい。

その為に、本田のような真のジャーナリストが誕生する事を切に願いたい。