ここでのネタバレは『君の名は。』本編のみならず、小説版及び番外小説『Another Side』、さらに他新海誠作品も含みます。ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「『君の名は。』は、いい。」そういう評判を聞くと同時に、「『秒速5センチメートル』のアンサーとなる作品だ。」という評判を聞いていた。そこで、過去の新海誠作品をすべて観て、その上で『秒速5センチメートル』を、さらに、もう1回観た。なるほど。傾向としては、時間や距離の隔たりを越えた愛を求めながらすれ違う男女を表現しているのか、ということを知った。その上で、『君の名は。』を1回観た。ジェットコースターのように展開が速かった。そのせいであろうことか僕は、全部鑑賞したにも関わらず、距離のみならず時間軸が異なる2人が入れ替わっているという、今作品において1番重要な鍵に気づくことができなかった。そんなことにすら、気づかないバカであるから、もちろん何が『秒速5センチメートル』のアンサーかもわからなかった。さらには、『言の葉の庭』を観ていったのにも関わらず、ユキちゃん先生をスルーし、『星を追う子ども』との風景の類似にも気づかなかった。圧倒的国語力・記憶力の欠如である。

 

 そこで、小説版2冊を読破した。

 

 まず、原作小説で主人公2人の心情と時間軸と出来事をしっかり理解した。(映画では理解できなかったのが恥ずかしい限りであるが)なるほど、入れ替わりの時間軸は3年ずれていたのね。だから、三葉が瀧に会いに行ったときに、瀧は三葉がわからなかった。すれ違ってしまった。なるほど、おもしろい。

 

 その後、"Another Side"というサブキャラクター視点を含んだ短編集を読んだ。そこで、(瀧の三葉への入れ替わり生活の困惑というギャグストーリーを除いて)、それぞれのキャラクターの持つある種の思想を知ることができた。特筆すべきは第四話「あなたが結んだもの」であるだろう。なぜ宮水敏樹が最初(瀧が三葉の体に入っていた時に)説得に応じず、たそがれ時に元に戻って本当の三葉に説得されて、住民を避難させたのかという謎が解ける。あまりにも強い妻二葉への思いと、彼女の死をきっかけに弱まっていく一葉、三葉、四葉、宮水神社への思い、それが彼を町長に駆り立てた。つまり、神社などという信仰ではなく、(賄賂など黒い噂をされたとしても)インフラ整備中心の政策を推し進めることで、二葉のようなことを二度と起こさないようにしようと考えたのである。なるほど、映画ではヒールっぽいが、かなり信念がしっかりしていてかっこいい。さらに、宮水神社の歴史及び信仰の内容に関して細かい設定が追加されているため、おもしろい。(もちろんこれはフィクションなのだが、リアリティがある)その他にも、第一話「ブラジャーに関する一考察」は、かなりコメディー色が強く、入れ替わり生活の日常を垣間見えるので笑える。第二話「スクラップ・アンド・ビルト」は、テッシ-の糸守に対する思いと彼の親の仕事への反発という心理描写が細かくてよい。第三話「アースバウンド」は四葉の姉の変化に対する純粋な疑問が表現されている。映画でもそうだが、かなりしっかりしていて大人びている。それなのに、三葉のアイスを勝手に食べちゃうところとか、ギャップ萌・・・なんてしてませんからねっ!(汗)四葉をもっと掘り下げたらおもしろそうだなーと思う。

 

 その上で、今日、もう1度映画を観てみると、「あー、だからかー」と思わせるシーンが多く、奥行きが感じられ、(様々な意味で)おもしろかった。楽しめた。他の人にも、新海誠作品をすべて観てから『君の名は。』の1回目を鑑賞し、それでポカンとしてしまう気持ちをぐっと抑えて、小説2冊を読み、その後で2回目の鑑賞に行ってもらいたい。瀧と三葉だけでなく、それ以外のキャラクターにも何らかのすれ違いとその解消を見て取ることができる。そのおもしろさ、深さといったら言葉にできず、必ず忘れられない作品となった。
 また、最後のシーンも重要である。ここが『秒速5センチメートル』のアンサーとなる部分である。瀧も三葉もおぼろげながら相手のことをずっと思っていた。そして2人は別々の電車ですれ違う。『秒速5センチメートル』であれば、頭の中で呼びかけ合って終わりである。しかし、今回は違う。すれ違った瞬間お互いにお互いのことを気づく。そして隣の駅から降りて互いに走り出し、すれ違って振り返る。そして、「君の名前は。」と問いかけるのである。つまり、思い続けることで、届くということである。
 ここまで、奥行きが感じられ、しかも(風景、ストーリー、声、音楽など様々な意味において)美しい作品を観れてよかった。一生忘れられない作品になるだろう。

 多分このネタバレを読んだところで、鑑賞した人は「知ってた(笑)」という反応をするだろう。もう国語力不足は治療不可能なのかもしれない。