お通夜に行った。

俺は2019年4月から2022年の3月まで

豚というブラック上司のチームで働いていた。

えこひいき、自分勝手、いい加減でクソ態度が悪い。

自分の歴史上最も最悪な上司。

 

長く勤めてきて一度も辞めたいと思わなかったのに

1日で辞めたくなった。

 

そんな俺を支えてくれた人がいる。

Nさんだ。

 

豚の元上司で

60歳を超えたシニア職員だがエネルギッシュで明るい。

豚が作ったよどんだ空気を中和してくれる。

彼の言葉に何度助けられたことか…。

踏ん張れたのはNさんのお陰でもある!!

 

プライベートはあまり語らない人。

結婚の有無も知らなった。

 

雨の日も風の日も遠くの家から

自転車を漕いで出社し一生懸命働き

そして爽やかに自転車で帰っていく。

一度も病欠がなく鉄人と呼ばれていた。

彼を悪く言う人は誰もいなかった。

 

若い人の話を聞くのが好きみたいで

自分の知らない言葉を聞くと飛んできて

それは何か?と問うてくる。

好奇心旺盛で子供のような顔をする時がある。

 

横綱ラーメンに行くのが夢(笑)

理由は分からん。

だが俺で良ければ叶えてあげたかった。

 

去年、俺は異動でチームを離れた。

Nさんと顔を合わせる機会は減ったが

同じ会社にいるので会えばたわいもない話をして盛り上がる。

Nさんが引退するまでずっと当たり前のように続くと思っていた。

 

 

 

今年の1月に突然Nさんは会社に来なくなった。

どうやら病気で入院したらしい。

病名を聞いて胸が痛くなった。

 

膵臓がん。

 

がんのなかでも進行スピードが速く

症状が出にくいため発見時にはかなり進行している場合が多いらしい。

 

12月に体調不良だったらしいが

繁忙期に周りに迷惑はかけられないと

大丈夫だからと周りに伝えながら働いていたらしい。

 

3月、一度Nさんは会社に顔を見せた。

誰もいない時間を見計らって。

身体は順調に回復していて

夏ごろに復帰すると上司に挨拶しに来たらしい。

しかしそれとは裏腹に

顔は痩せこけて髪も無くなっていたらしい。

 

会社の皆は回復していると信じて疑わず

その時を期待を込めて待っていた。

 

 

 

先週末、訃報が届いた。

Nさんが亡くなったという。

 

 

信じられなかった。

どうして?なんで?

身体から力が抜けていくのを感じる。

うまく現実を受け入れられない。

周りより遅れて聞いたので

家族葬だがお通夜に行くのか?

とかお花代がどうとか

そんな話をしている人たちに怒りが湧いた。

 

なぜそんなに冷静なのか!?

悲しくないのか?

 

運よく葬式とかあまり縁が無いので

全然知識が無いが

亡くなった翌日にお通夜を行うのはルール。

でも気持ちが切り替わらないよ。

回復していたんじゃないのか!?

嘘だと言って欲しい。

 

なんとか仕事を終わらせて

家に帰り少し考えた。

亡くなったのは事実。

お別れの挨拶ができるのは今日しか無いんだから

ちゃんと会いに行こう!

 

切り替えて着替えて

同僚の車で斎場へ向かう。

 

家族葬と聞いていたので

迷惑かとも思ったが

遺族の方からは歓迎された。

 

Nさんはよく笑う人でしたと言うと

家ではまったく笑わない人だと驚かれた。

会社での姿や皆からの評判

個人的な感謝を伝えると

涙を流しながら逆に感謝された。

 

家でもあまり自分の事を話しをしなかったみたい。

ただ本当に仕事が好きで

闘病中も職場復帰が最大のモチベーションだったと。

朦朧とした意識の中で

 

「今日は出勤だ」

 

と呟くほどに。

 

俺は死に顔を見るつもりはなかった。

笑顔のNさんで記憶していたいからだ。

しかし遺族の方とNさんの話をする内に気持ちが変わった。

最後に顔が見たくなった。

 

ゆっくり近づいて棺を覗くと

信じられないほどに痩せて髪のないNさんが居た。

やすらかな顔だった。

 

色んな感情が込み上げてきて

涙となってあふれ出した。

 

お顔を見て良かったんだと思う。

最後は苦しみから解放されて天国へ旅立たれた。

よかった。

 

 

Nさん長い間、本当におつかれさまでした!!

貴方のお陰で今も辞めずに働いています。

恩返しになるかわかりませんが

これからもNさんの様に笑顔で仕事を頑張ります。

いつか横綱ラーメン食べましょう!