あのこは貴族 山内マリコ | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

榛原華子も

時岡美紀も

相楽逸子も

魅力的で読んでいて気持ちよかった。

 

上流中流下流の階級格差は切実に残酷だけど

上流のなかでの格差もいやらしくて残酷だ。

 

最近上流になったところのひとと

何世代も前から上流をキープしているひととでは

歴史と文化の重みが違うということか。

 

もちろん新興の上流には

自分で成り上がったというプライドもあり

コンプレックスを吹き飛ばすだろうけど

むかしから上流のひとたちのおっとりとした鷹揚さや気品のようなものとは

価値観が相容れないような気がする。

 

華子にはほんとにじりじりさせられた。

控え目で上品なのはいいけど

ちゃんと自分の意思を持とうよって。

その調子じゃ焦って失敗するよって。

選ばれるようになるための努力よりも

選べるようになるための努力をした方がいいよって。

でも心の美しさがなんとも魅力的なんだよなあ。

男性からケアされたかったんだと気づくところも

あまえともいえるけど

そりゃあそうだろうな

と素直に共感もできた。

 

第3章 邂逅(女同士の義理、結婚、連鎖)は

エンタメ要素が強くなっていたけど

心中天網島のアイデアにぐっときた。

かっこいい女同士の義理。

 

ぼくとしては

第1章 東京(とりわけその中心の、とある階層)

第2章 外部(ある地方都市と女子の運命)

で描かれる

東京に実家がある裕福な女性の洗練された生活や

地方都市の裕福でもない実家から東京に出てきた頭の良い女性の生活

がリアルで好きだった。

 

松濤の開業医の末娘の暮らし。

新しいお店よりも老舗高級ホテルのラウンジやレストランを好むのとか。

居酒屋のトイレに入れないとか。

男性との出会い方とか。

ひな祭りやクリスマスやお正月の過ごし方の対比もリアルだった。

織田作之助や谷崎潤一郎の作品には

時代の暮らしの文化的な細部が残されていて

読んでいて興味深いんだけど

この作品にもそういう魅力があった。

 

終章 一年後

を終えての読後感はほんとうに爽やかだった。

 

それにしても

青木幸一郎をはじめ

男たちの無邪気な無責任さは身につまされる。

ほんとうに悪意なく

女性の気持ちを無視あるいは軽視して

生活するんだよね。

なんだか憎めないところもあるんだけど

男たちが変わらないと

あるいはわからないと

男も女もしあわせになれないんだよ。

 

2020年代は

もうちょっとましになりそうな気はするんだけど。

 

 

 

--あのこは貴族--

山内マリコ