羽生善治九段を
岡村啓嗣さんが
1985年の
15歳のデビューから撮り続けてきた写真に
2018年の羽生さんがコメントを付けたという珍しい1冊。
30数年も
同じひとから撮影され続けるって
そうそうあることじゃないと思う。
野球なら
長嶋茂雄さん
王貞治さん
はあるかもしれない。
イチローさんでもあるかな。
サッカーなら
中田英寿さん
本田圭佑さんか。
三浦知良さんでもあるかな。
俳優なら
吉永小百合さん
高倉健さんとか。
それにしても
15歳の羽生さん
わかい!
でもまあ勝負師ではあるので
やはりそこは厳しい世界を第一線で生き抜いてきたひとである。
羽生さんは
将棋以外のことも
幅広く体験されているので
そういう面も振り返られる。
写真がメインで
文章はあくまでも
2018年の視点でのものであり
当時どのような思いだったかは
この本からはわからない。
文章で良かったのは
AIと美意識についてのところ。
美意識は可能性を狭める
という問題提起もあるけれど
AIは勝っても美しくない
なぜならば
ひとが持っている
勝負の方針や美意識が感じられないから
というのはなるほどなと思う。
たしかにAIはその圧倒的な演算速度で
正確な手を弾き出すだろう。
しかし人間が見たいのは
ただの勝ち負けではなくて
勝ち負けをめぐるドラマなのである。
そういう意味では
いくらAIが進化しても
ひとが指す将棋はなくなることはないだろう。
もしかしたら
レンブラント風
の絵画をAIが描くように
羽生善治風
の将棋をAIが指せるようになるかもしれないが
将棋はライブなので
ひとが見たがるのは生の勝負なのだろう。
--瞬間を生きる--
羽生善治
撮影 岡村啓嗣