言葉の守り人 ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

メキシコ人の作家の作品を読むのは

これが初めてなのではないかな。

 

たしかに呪術的マヤ・ファンタジー。

 

現代のメキシコが舞台だと思うけど

なぜか古代のような雰囲気が漂ってくる。

 

おじいさんから言葉の守り人の役割を引き継ぐ少年の経験と成長。

 

とりたてて怪しい儀式めいたことではないのに

表現が素朴で豊かなので

神秘的で原初的なものを読んでいるように思える。

 

なんだろうな。

 

誰にも言えない自分だけの名前。

 

守り導いてくれる自分だけの鳥。

 

森や風や夢。

 

この作品を読んでいる間は

どういうわけか不思議な夢を見ることが多かった。

 

季節も時間もわからない。

海から砂浜を経て続く小高い丘のうえのベンチに

ぼくはひとりで座っている。

何も視界を遮るもののない空は薄い雲に覆われ

雲は光の加減で複雑な色彩になっている。

それは美しいというよりも不穏を予感させる。

ぼくはベンチから立ち上がり

丘から砂浜へ歩いて行く。

あたりには誰もいない。

時間が止まり音も消えた世界で

ぼくは何かを考えている。

どれくらい時間が過ぎただろう。

丘のうえのベンチに荷物を置いていたことを思い出して

取りに戻ろうとすると

どこからかひとりの女性があらわれ

ベンチに向かって歩いている姿が目に入った。

 

たとえばこんな夢。

 

この作品がぼくの深層心理に何かを働きかけたのかもしれない。

 

おそらくマヤに限らず

人間の歴史において

こういう呪術的神秘的な伝承は必然のものだった。

 

日本だったら遠野物語か

あるいは古事記か。

 

ときに根源的なものに触れるのは

こころをリセットさせてくれる機会になる。

 

 

 

--言葉の守り人--

ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ

吉田栄人 訳