これまでに他のアーティストさんの作品に林檎さんが客演した楽曲を、林檎さん自身が編纂したコラボレーション・アルバムです。
客演じゃあ林檎さんがメインじゃないから物足りないかもな、と思いつつも聴いてみたら、聴けば聴くほど味があるというか、さすが林檎さん、他のアーティストさんとの見事な調和で音楽の世界を広げています。
こういうアルバムでもなければぼくが聴くことがないようなアーティストさんの作品にも触れられて、これも何かのご縁ですね。
といいつつやはりお気に入りは林檎さんメインの楽曲。
4曲目の“IT WAS YOU”は林檎さんと斎藤ネコカルテットさんの演奏で詞と曲はあのバート・バカラックさん。
バカラックさんならではのうつくしい旋律。
ミュージック・ビデオのあの、冷え切った空気のなかの静謐な演奏がこころをやさしく包んでくれます。
林檎さんのクラシカルなピアノの音色も素敵。
7曲目の“熱愛発覚中”は林檎さんが詞と曲で、あの中田ヤスタカさんが音楽監修をしています。
中田ヤスタカさんといえばPerfumeさんとかきゃりーぱみゅぱみゅさんとかでヒット連発のプロデューサーさんですが、林檎さんとのコラボでもその味をいかんなく発揮しています。
これでもじゅうぶんポップでたのしく仕上がっていますが、欲をいえば、林檎さんに遠慮せず、声なんかにももっと手を加えて、中田ヤスタカ色に林檎さんを染め上げた楽曲も聴いてみたいです。
ちなみにこの曲のミュージック・ビデオでは林檎さんの意外に充実した(もうちょい華奢な感じのイメージを抱いていたので…)ボディを拝めます。
林檎さんがメインじゃない曲だと、10曲目の“危険すぎる”と12曲目の“きらきら武士”、それから14曲目の“APPLE”が特に好きな感じ。
まあ、ほかのももちろんいいんだけどあえていまの気分で選べばってことで。
“危険すぎる”は浅井健一さんの楽曲に林檎さんはコーラスで参加。
安モーテルに着いたふたり。シャワーのお湯は途中で止まるし、テレビのリモコンのボタンはほとんど全部ないし、で、触れ合う肌と肌。
女が言う。
♪コカコーラ 買ってくるけど 他に何かいる物でもある?♪
男が答える。
♪だったらついでにマルボロとトランプとチョコレートあとスケッチブック 笑顔を描きたい♪
くーっ、かっこいい。
林檎さんの声はほとんど聴こえないけど、浅井健一さんの歌声とギターの音に痺れます。
“きらきら武士”はレキシさんの楽曲で林檎さんは歌唱で参加。
♪あっなったーはぶっすぃー きっらっきーらぶっすぃー きっらっきーらぶっすぃーぶっすぃーぶっすぃー♪
ってたのしい!
♪今日は朝から馬乗って あたしをここから連れ出して もう城には戻らないって 家臣には何も告げないで♪
音楽がポップで賑やかで、林檎さんの歌唱もかわいい!
“APPLE”はTOWA TEIさんの楽曲で林檎さんは歌唱で参加。
TOWA TEIさんのプロデュースはまた中田ヤスタカさんとは違ってクールでスタイリッシュ。
林檎さんの甘くささやく歌声にうっとり。
それにしても林檎さんの魅力はやっぱりどんな曲にも合わせられる七色の声色というか歌唱表現の技術だなあ。
これだけ独自色を失わずに七変化できるひとはそうそういないです。
そうそう、斎藤ネコカルテットさんと林檎さんの演奏で聴かせるインストの曲“Between Today and Tomorrow”の不穏なピアノ、バイオリン(第1、第2)、ビオラ、チェロの旋律は林檎さんの作編曲。
こういうこともできるんだから、さすが元新宿系自作自演屋ですよね。
尊敬!
――浮き名――
椎名林檎篇