こういうの書かせたらうまいなあ、川上未映子さん。
元日の分厚い朝刊、いくつかの分冊の中にこういう広告特集があった。
ARASHI NOVELS
まっさらな始まりの日
――五つの描き下ろしショートストーリー――
嵐の5人を主人公に5人の作家がそのイマジネーションを自由に働かせてつむぎだした五つのストーリー。
未映子さんは、松本潤さんからインスピレーションを得たこの作品“僕たちは、抱きあったことさえ”を描いていた。
ああ、松本潤さんらしい繊細なお話。
美容師の彼と、彼に髪を切ってもらう客だった彼女。
美容室で出会って、しばらくして付き合い、やがて別れるのだが、その後も彼女は毎月、彼に髪を切ってもらいにやってくる。
1か月分伸びた毛先を1か月分だけ切ってもらいに。
彼女の真意を推し量りかねて戸惑う彼。
余白が多いストーリー。
いろいろと想像が膨らむ。
甘い、エロい。
こういう詩的なシーンを描かせたら、ほんとうにうまいなあ。
松本潤さんもそうとう気に入っていたみたいで、映像化されるなら演じてみたいとまで言っていた。
ちなみにほかの4作品もそれぞれゴージャスな作家さんの手によるもので、ぜいたくな饗宴だった。
さすがお正月。
二宮和也さんには伊坂幸太郎さんの“Eの874”。
櫻井翔さんには平野啓一郎さんの“フェニックスのリア王”。
相葉雅紀さんには山崎ナオコーラさんの“僕は駿馬”。
大野智さんには阿部和重さんの“追跡者”。
この企画の中では、実は阿部和重さんの作品が、いちばんバシッと決まっていた。
かっこいい!!
ずるいくらいよくわかってるなあ。
――僕たちは、抱きあったことさえ――
川上未映子