久しぶりに文芸誌を買った。
新潮 2013年11月号。
野田秀樹さんの「MIWA」と川上未映子さんの「ミス・アイスサンドイッチ」が掲載されていたから。
ぼくにとっては贅沢な組み合わせ。
ミス・アイスサンドイッチの読み始めは、なんだかサリンジャーのライ麦畑をほうふつとさせた、なんていうと作家は嫌な気分なんだろうな。
だれかの作品と似ている、っていわれるのは。
特にメジャーな大作家に似ているといわれると、いや、真似たわけじゃないですから、って。
といっても、偉大な作品に似るのは、後の時代の作家の宿命みたいなもの、っていうか、模倣からあらたなものが生まれる、っていうか、後世の作家に影響を与えるからこそ偉大な作品といえるのである、っていうか。
ぼくのこんな感想は、まったくもって的外れなのかもしれないけれども。
そんなこんなはともかくとして、やはりぼくは川上未映子さんが書く文章と発想と空気感が好きだ。
信頼できるし、安心できる。
間違いがない、って思える。
ほかのひとはどうだか知らないが、そんなのはどうでもいいことだし。
それはあまたのミュージシャンのなかからお気に入りのアーティストを選ぶのにも似て。
誰がいいとか悪いとかじゃなくて。
ミス・アイスサンドイッチがどうなるか、おばあちゃんがどうなるか、ママがどうなるか、ヘガティーがどうなるか、いろいろと想像しながら読んだけど、たまにはこういう終わり方もいいと思う。
ほのかにハッピー。
なんとなくおとぎばなし。
何かを訴えたいとか、きっとないんだろうな、この作品には。
それでもいいんです。
それだからいいんです。
あえていうとすれば、うつくしいとか好きとかは自分が決めることであってほかの誰かの意見に惑わされる必要なんてないんだよ、っていうことかしらん。
これってあたりまえすぎる?
――ミス・アイスサンドイッチ――
川上未映子