窓の魚 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

以前、新聞の特集で橋本愛さんが特集されていた。


あいにくぼくはこのひとを存じ上げなかったのだが、過去に出演した映画が、

告白

とか

桐島、部活やめるってよ

とか

ツナグ

とか

さよならドビュッシー

とか

読書好きにはおなじみのタイトルばかりだったので興味を抱いた。


Anotherアナザー

での眼帯の少女の写真はぼくの印象にも残っている。


そんな橋本愛さんが絶賛していた小説がこの

窓の魚。


作者は西加奈子さん。


2007年に通天閣で織田作之助賞、2011年に咲くやこの花賞を受賞。


最近ではふくわらいで直木賞候補になったり、きいろいゾウが映画化されたりしていて、結構いい感じにのってきているらしい。


イランのテヘラン生まれで、エジプトや大阪で暮らしていたという。


織田作之助賞もそうだが、咲くやこの花賞というのは大阪ではちょっとした名誉ある賞なので、すっかり大阪人には親しみやすい経歴である。


そんなこんなの予備知識を持ちながら、ぼくも読んでみた。


窓の魚。


男女4人組の温泉旅行、っていう導入に青春の甘さとほろ苦さを期待しながら読み始めると、それは大きな勘違いであることがすぐにわかる。


ナツとアキオ、トウヤマとハルナのよくわからないあやふやな関係。


物語全体を通して感じる薄い濁りのある透明な浮遊感。


船酔いにも似た落ち着かないゆらぎ。


なんとなく勝手にユーモアのある文章を想像していただけに、そのギャップをまずは越えなければならなかった。


繊細でナイーヴな登場人物たちに微塵も共感を覚えることはなかったのだが、小説としてはよくできている。


かなり綿密につくり込まれたに違いない。


決してあかるい話ではないのだが、不思議なうつくしさを感じるのは、登場人物たちのあまりにも脆くて儚くて弱々しい、生きる意志の欠如によるものだろうか。


ちょっとした仕掛けのせいで、サスペンスの要素もあるのが物語に変化をつけている。


ラストへの展開を予想しながら読んだが、そこはおもしろい方に裏切られたので、ある種の清涼感さえ感じた。


それにしても。


男女4人で温泉旅行に行くなら、もっとたのしく行きたいものだ、と小説とはなんの関係もなく、考えてしまうのだった。




――窓の魚――

西加奈子