小学生のころ青い鳥文庫にお世話になった記憶はない。
もしかしたらあるのかもしれないがすっかり忘れてしまっている。
この本は講談社の青い鳥文庫ができあがるまでを追ったセミ・ノン・フィクション・ストーリーといったらいいだろうか?
最初、この本自体が青い鳥文庫かなと思っていたが、そうではないようだ。
ハードカバーだし。
でも総ルビで文字も大きくて小学生向けといえばそういう気もする。
しかし内容はちょっと小学生には難しいような気もする。
というのはぼくの驕りで、読書好きの小学生をあなどってはいけないのかもしれない。
対象年齢は小学生から大人までとなっている。
青い鳥文庫の編集部が主な舞台。
主人公の編集者が、作家、イラストレーター、販売担当、事業担当、校閲部、印刷会社、書店などとやりとりし、悪戦苦闘しながら1冊の本を世に送り出すまでを描いている。
ブログで本好きと銘打っているぼくではあるが、この本を読んでいると、出版社に入社しなくてよかったー、とつくづく思う。(そもそもそう簡単には出版社には雇ってもらえないけど。)
出版社はすごくたいへん。
締切には追われるしミスは見逃せないしいいものにはこだわりたいし予算はかけられないし。
この本では、1冊の完成を追っているが、実際には並行して何冊もやらなければいけない。
その1冊1冊にここまでの思い入れを込めて仕事をするのは無理だろうなあ。
自分にとってはつまらない作品とか、やりにくい作家もいるだろうし。
ぼくはいままでどおり趣味の読書でいいや。
でもまあ、実際の出版の現場でも、この本のように、本を愛するひとたちが私生活をなげうって本づくりに没頭していることを信じたい。(いや、私生活も大事にしてほしいけど。)
単純に、1冊の本ができるまでの工程を知ることができて、へえー、って気分にもなる。
校正の手法なんて実に詳しい。
あたりまえだが1冊の本の完成までには実に多くのひとが携わっている。
それに、やっぱり主人公の頑張ってる編集者さんが周囲に助けられながら仕事をやりとげ、書店の店頭に本が並び、こどもたちが目をきらきらさせて買っていくシーンではうるうるとする。
現実の出版の現場はさらにシビアだろうけれど、本好きとしては読んでおきたい1冊かも。
それにしてもこどもの読者相手だとおとな相手以上にぴりぴりするのはそうかもしれないなあ。
なにしろ純粋な目でおかしいことをおかしいと指摘されたらおとなのぼくは泣きたい気分になりそうだ。
わかってるんだけど時間切れで、とか言い訳できないし。
本だけでなく、ひとつの作品なり商品なりがぼくたちの手元に届くまでにはさまざまなドラマがあるはず。
ぼくもぼくなりに何か社会の役に立つ仕事ができているだろうか、って自問してみたい気にもなる。
そんな仕事始めの前日の夜。
――青い鳥文庫ができるまで――
岩貞るみこ