流刑地にて | (本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

これは好き嫌いがわかれるなあ。


嫌いというよりも

ちんぷんかんぷん

と感じるひとも多いだろうなあ。


ぼくはどうかというと

もちろん好き。


ちょっと間違っているかもしれないけれど

ドライで

ハードボイルドな

作品だと思う。


学術調査の旅行家

将校

囚人

見張りの兵士


主な登場人物はこの4人。


そこに

先の司令官と

新しい司令官の存在が

語られる。


かなりえげつなくて残虐な処刑が描かれるのだが

血や痛みなどの苦痛にリアリティがない。


まるで悪夢のなかのできごとのように

質感が伴わず無機的に精神的にダメージを与えられる。


これはカフカさんの作品に共通する感覚なのだが

特にこの作品にはそれを感じる。


五官を通じた刺激を受けず

もっぱら想像力による脳への直接的な刺激。


シュールとか不条理とか理解不能とか

そういうことばで何かを語ったような気になってはいけない。


物語の展開も不気味におもしろい。


おもしろい

っていってしまうのは語弊があるに違いないのだが

じっさい読んでいてそう思ったのだから仕方がない。


でもこの作品のおもしろさを共有できるひとは

なかなかいなさそう。


きっと素直に生きているひとには通じないだろう。


いったいこのおもしろさはどう表現したらいいのだろう。


とにかく読んでもらうしかないのだが

ハテナ

ってなるひとがほとんどだろうなあ。


無論ぼくも意味がわかっておもしろいといっているわけではなくて

感覚的におもしろいっていっているのに過ぎないのだけれどもね。


あいかわらずいろんな解釈が可能な

自由度の高い寓話なのだと思うが

ふとこんなふうにも考える。


ぼくはいま平和な生活のもとにおかれているから

この作品のことを非現実的な思考実験のように感じているけれども

もしかしたら世界中のどこかの場所やひとにとっては

ものすごく現実的な恐怖なのかもしれないな

と。


たとえば自分の生殺与奪の権利を謎の侵略者が握っていて

目の前で理解不能な言語で自分の処遇について

一方的に議論されているような場面。


想像するとにわかに身近な世界との共通点が

思い浮かんできて背筋が寒くなるのである。


ああやっぱりうまく伝えられないなあ。


短い作品なのでどなたかお読みいただいて

上手にこの作品のおもしろさをあらわしてくれませんでしょうか。


乞う。




-流刑地にて-

カフカ

訳 池内 紀