ずっと気になっていて
ようやく読みました。
蠅の王
読む順序はやっぱり
十五少年漂流記
の後が正解ですね。
陽と陰です。
十五少年漂流記が
少年同士の衝突や行き違いもありながらも
基本的に
誇りや秩序
勇気や献身
知恵と行動
のさわやか物語であったのに対して
こちらは
現実味があるというか
子どもに限らず
人間の暗部を
みせつけられるようで
目を覆いたくなるのでした。
でも目が離せないんですけど。
法螺貝
眼鏡
烽火
狩猟
仮面(顔につけた迷彩色)
獣
これらがキーワードになるでしょうか。
十五少年漂流記でも
島の獣を狩って
その肉を食べていましたが
(家畜化にまで成功します)
蠅の王の狩りは
単に肉を得る手法に留まらず
人間の暴力に対する欲望を
満たすものとして描かれていました。
十五少年漂流記が描かれたのは
1888年。
蠅の王は
1954年。
都会暮らしでは
肉は加工品の姿でしかありませんから
獣の肉を頂戴する過程においても
その意味合いは大きく違っているのでしょう。
子どもたちがだんだんおかしくなっていく描写に
空恐ろしくなりました。
が
こういう状況に置かれて
子どもなりにも
まともな組織運営とか
リーダーとか
そういう文化的概念が育っていないなら
こんな状況にもなり得るよな
なんて思いました。
後半の展開は
めまぐるしいテンポで切迫して進み
どきどきしっぱなしでした。
無人島ならずとも
このように殺伐とした
半ば平常心を失った狂気ともいえる場面には
日常でぼくたちもしばしば遭遇しているような
そんな気さえしてきます。
あと
人を傷つけて喜びを感じる人間は
やっぱり現実の世界にもいそうです。
ジャックは周囲の環境によって
善にも悪にも容易に反転しそうですが
ロジャーには絶対悪の気配が漂っていて
不気味な存在です。
うまくまとめられませんが
とにかく読んで正解だった名作です。
-蠅の王-
ウィリアム・ゴールディング
訳 平井正穂