不思議な味わい
意味が分からぬ故に
意味を求める
自分の会得せぬものに対する、盲目の尊敬
豊干の知者ぶりに感嘆し
自分の思考を停止して
彼の言葉を鵜呑みにする
果たして
拾得は普賢なるか
寒山は文殊なるか
されば
閭は盲目の尊敬をする人となる
たまたま尊敬の対象が
正鵠を得ていてもなんにもならぬ
さらに道翹に至っては
道を求める人でありながら
尊敬すべき対象すら
見抜けぬ愚か者ということになる
また
拾得が普賢ならず
寒山が文殊ならざれば
閭は尊敬の対象を誤れる
滑稽人となる
意味を求める行為の
無意味を笑われているかのように
ナンセンスなユーモアと解するのが
最も妥当かもしれない
-寒山拾得-
森鴎外