認知症の妻が新宿で迷子に③ (見つかった 編)

 

妻が新宿駅付近で迷子になった。

認知症の妻は、極度に不安になると、顔面蒼白、唇、手・指が震え、最悪パニックになる危険性がある・・・。

 

約一時間捜したが見つからない。

駅員さんに事情を話すと・・・

 

 

うろたえている僕を見て、駅員さんは「ちょっと連絡取ってみますね」と言って、電話を掛け始めた。どこと? 誰と?

 

 

 

駅員さんを集めて特別捜索の準備? 

何も言えない僕はただ黙って立っていた。

 

 

一番目の電話は、直ぐに終わった。

二番目の電話も短く終わった。

電話の相手は分からないが、迷子情報を聞いてくれている雰囲気だ。

 

三番目の電話はそれなりに会話が続いている・・・

 

駅員さん(Aさんと呼ぶ)が、電話の途中で僕に話しかけてきた。

 

駅員Aさん「失礼ですが、奥様との待ち合わせ場所は改札の前ですよね?」

僕「はい。改札口の前、入り口の前で待ち合わせです」

 

駅員Aさんは相手の方(駅員Bさんと呼ぶ)との電話を再開した。

 

もう一度僕に話しかけた。

 

駅員Aさん「構内で改札の場所と名称を聞かれたご婦人がおられたとの情報がありますが・・・」

 

僕「あっ、いや、改札口の前です。何度もはっきり言ってありますから、改札を入らないことって」

 

駅員Aさん「そうですか」

僕「あっ、えっ、ちょっと待ってください。ひょっとすると、改札の中へ入ったかも知れません・・・。すみません」

 

駅員Aさん「いえ、結構ですよ。じゃあ、もう一度聞いてみますね」

その駅員Aさんは、僕から聞いた妻の服装、髪型などを相手の方へ伝えた。

 

駅員Aさん「はい、おそらくお捜しの奥様のようです。行きましょう」

 

駅員Aさんが構内の中を進み僕が続くと、電話の相手方の駅員Bさんと思われる人が手招きしてくれた。

 

駅員Bさん「この付近でした。改札の名称と場所をお尋ねになりました、30分ほど前でしょうか、そして5分ほど前にも」

 

そのとき、僕の携帯が鳴った。

僕「(あっ、妻だ)僕。今どこ?」

妻「よかった、つながった」

 

僕「うん、今どこ?」

妻「今ねえ、ん~んと、山手線の改札の前

 

僕「JRの山手線の改札の前??」

 

駅員Bさん「山手線のホームじゃないですか?、あちらです、あの先の階段がホームに続きます」

 

指さす方向を見ると・・・

少し遠くに・・・

妻がいた!!

 

電話してる!!

生きている!!

動いている!!

 

助かったぁぁぁ

 

続きます。