認知症の妻が新宿で迷子に② (必死の一時間)

 

 

女子会のランチのあと、カフェでお茶をして・・・そのカフェに僕が行って妻をピックアップする予定だった。が、カフェのあとみんなで駅の方へ歩いてそこで解散になったらしい。

 

「カフェにいるんじゃないの?」

「ん、お茶終わってね、皆で少し歩いてね、駅で解散になった」

 

「そっか、、駅のどこら辺にいる?」

「ん~ん、駅だね、駅、ちょっと調べて電話するね」

 

「え? まぁ、電話、待ってる」

 

ここから難解パズルの迷路へ入って行くのでした。

 

 

そのあと5分ほどして、妻から僕の携帯に電話が入り、新宿駅西口にいるとのことだが、西口のどこにいるのか分からない。

 

(新宿駅西口の立体地図)

 

 

新宿駅西口には、JR(東日本)、京王線、小田急線、地下鉄が入っており、改札口の名称も、中央西口、地下西口、京王百貨店口など、一階と地下に各社の改札口がある。

 

妻のいう居場所へ僕が行くがいない。僕が指定する場所(改札口)に来るように妻に言ったが、妻は来ない。

 

 

再び僕が動くが見つからない。

一時間近く経っており汗びっしょり。

妻との携帯は時々つながるが途中で切れる。

地下通路などでは電波の環境はよくないのだ。

 

僕は心配した。

妻は認知症の症状として、極度に不安状態になる。不安顔になり、顔がこわばり顔面蒼白、唇が震え、手・指が震えて体全体が震える。さらに進むとパニック状態になる危険性がある。既に一時間経ち、不安も極限にまで達しているだろう。

 

 

駅員さんと相談した。

妻が認知症であることも話した。

必要であれば「緊急対応」が取れますとの由。複数の駅員を緊急招集して特別捜索を実施するのだそうだ。緊急性がある場合・・・、言外に命の危険がある場合のように感じた。

 

僕はどうすべきだろうか?

妻の不安からパニックになる危険性がある。過去に不安が高まりパニック寸前までいったことがあった。だが、今は、その緊急対応を依頼するまでは・・・。妻に何かが起こってから後悔しても時間は戻らない。緊急対応の特別捜索を頼むべきか?

 

 

たかが迷子じゃないか、と自分に言い聞かせても、僕の心拍数はどんどん高くなる。焦っているはずなのに、なぜか先ほどの汗は全く引いている。

 

 

うろたえている僕を見て、駅員さんは「ちょっと連絡取ってみますね」と言って、電話を掛け始めた。どこと?誰と?特別捜索の準備? 何も言えない僕はただ黙って立っていた。

 

続きます。