プレアデス星団
このブログは椎堂昴というキャラクターが仮想の学園(戦国学園という現代系学園PBCが舞台です)で経験する事柄をもとに、彼の身におきたことや個人的な思いを綴っています。PBCをご存じない方は回れ右を推奨いたします。
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おでん友達

夜中の屋上で蓮花寺静佳君と知り合う。


すげぇ久しぶりの帰京、久しぶりの学校。

思わず脚が向いたのはなぜか屋上。

そしてそこでびっくりした。

何しろおでん屋台があるじゃないか。

屋台のテーブルには、

背中に短槍らしきものを背負った見知らぬ少年がひとり座り、

俺は彼になんとなく会釈しつつ親父におでんを注文。

ついで…彼の近くの席を指し示して相席は良いかと尋ねた。


彼は……快く頷き、俺はゲットしたおでんを目の前に運ばれる。

すると彼も食べ物を前にして急に腹が減ったのか

親父にもち巾着とか大根とか筋を頼んでいた。

何気に初対面の彼に自己紹介をしてみたら、

彼は蓮花寺静佳と名乗った。


同じ二年だと結構話もしやすい。

なんかテストのカンペ作りの話で盛り上がり、

妙な密約まで交わしてしまった。

初対面とは思えない親しみやすさだった気がする。


俺は奴に理数系のカンペを提供して、

彼は文系、殊に英語だの古文だののカンペを提供してくれるという。

一週間分の食券は英語のカンペに比べれば惜しくない。

俺は理数系のカンペと食券で彼から文系の、

なかんずく英語のカンペを受け取る心算でいる。

まぁ……それ以前に国語ぐらいは少し教えてやんよ、

って言ってたけど。


その日は俺の単車で彼を家まで送った。

そういえば奴は実家が静丘だって言ってたっけ。

温暖な場所だからツーリングにはもってこいだよな。

まぁ……次会ったら試合とかカンペとか結構ネタはあるよな。

基本良い奴っぽいし。今度会ったらまた遊ぼうぜ。


ってか静佳ってなんか女の子っぽい名前だよなぁ、

悪いかと思って突っ込まなかったけどさ。

こうあれだ、しーちゃんとか呼ばれてそうだ。

クリスマスメッセージ

12月も半ばを過ぎるころには雪が街にちらつき、

冬休みの前に流行るインフルエンザのお陰で

一足早く京闘から帰郷する事になった。

携帯電話の不在着信と伝言メモにはお袋の声。

単車は置いて来いと彼女は言い、

クリスマスプレゼントは何が良いかと愉しげに尋ねていた。

後は…悪友やら級友やなんかの年末の初詣誘い。


俺は天気を睨み、小康状態の路面で雪が解けているのを確認する。

丁度授業が終わって纏めた荷物を単車のもの入れに抛り。

後はのんびり実家へと帰省する。

さすがに三時間も突っ走るうちに身体は冷え切り、

手袋の中で凍えた指先の感覚を取り戻すために、

途中途中で休憩を入れては懐炉で暖めた。

闘京に近づくにつれて雪が舞い始めていた。


シープスキンのライダージャケットを着た肩に白く粉雪が滑り、

視界を邪魔するほどではないのを良いことに、

やがて銀色の単車は高速道路を降りて海岸沿いに出た。

爪の先がむず痒いほどの速度に狂奔できるでなく、

雪が降り続く海岸線をゆっくりと走り抜ける。

海からの風の影響で……都心ほどは積雪が無い。

遠くの藍が灰色に沈み、俺は其れを見たくてエンジンを止めた。


風防を上げて脚を着き、数ヶ月ぶりの闘京湾に見入った。

凍えた身体はそろそろ温かい部屋に戻れと急かすようだというのに。

其れでも……しばらく見入ったのは懐かしさからだった。

この海が俺の過ごした時間に寄り添っているかのようで。

「ただいま……しばらく休暇でこっちに戻ってる。」

「来年……暖かくなったらこっちに帰るから。」

「そんときゃまたよろしく頼むぜ。」


凍えた唇が白い靄を立ち上らせ、

薄い呼気を透かして見る海に挨拶を投げた。

後は真っ直ぐに家に向かう、冷えた身体を温めに。

単車のエキゾーストノイズを心地よく鳴らしたなら、

感覚が失われそうな指先を数回振って風防を閉じ、

加速が齎す心地よさと愉しさを享受してやがて家へ。


尤も都市のハイテクな融雪装置のお陰で、

実家のまでは問題なくたどり着いて無事に冠木門をくぐり。

久しぶりの帰宅に、

深夜も近いというのに玄関先から大声で母親に挨拶を。

丁度……来客たちが帰ってしまった直後だった母は、

慌てて俺を出迎えに玄関先へと駆けてきた。

「まぁ……精々待ちくたびれたわ?昴。」

「寒かったでしょう?さぁ早くお入りなさい。」

開口一番に……俺は笑ってシューズを脱ぎ、

凍えた身体を引きずるように居間へ向かう。


父親は来客を送届ける為に丁度出かけた直後、

祖父はとっくに就寝済みの時間だった。

だれも居ない広い部屋は、

いまだ来客のいきれが残るかに思われる。

ストーブの直ぐ傍に陣取り、巨大な炬燵に脚を突っ込んでいると。

母親が……幾つかの束を片手にみかんを差し出し。

「お友達からクリスマスカードが何枚か届いてたわ?」

俺は……思わず幾葉かを受け取り。

何気なく全てを開きながら、最期の一枚で手を止めた。


白いよくあるような……クリスマスカードは、

開くと仕掛けられた小さなオルゴールがささやかな旋律を奏でる。

俺は……一見差出人の無いそのカードを最期まで読み進め、

思わずもの思いにふけった。どのくらい其処でそうていたろう。

何度目かの母の心配そうな声で我に返り、風呂を勧める気遣いに従う。

上の空で入浴を済ませ、母親におやすみなさいを告げて自室に戻る。

たった一枚だけ白いメッセージカードを携えて。


自室のベッドに戻るとベッドに潜り込んで考える。

メッセージカードは枕辺に置いたまま。

長旅の疲れのせいか……考え事はやがて夢に変わってしまう。

夢の中で俺はカードに返信を書いていた。

未だに過去にならない思い出に……語りかけるように。

翌日は早くから父親に連れられて外出、

予め組まれていた予定だから文句は言えず。

父と親戚の家で外泊を済ませて昼頃漸く帰宅。

再び自室に篭ってカードに返信を認めた。

手書きではなくて………携帯にだったけれど。


「俺、未だに会いたいんだな」携帯にレスを入れて独白する。

其れこそ今になって初めて自覚する想い。

もう二人ともそれぞれの時間軸に生きている。

一体彼女は元気でいるのだろうか。

過去にならない想いを未だに引きずる俺は、

現在の彼女に会うのがとても怖いのだった。

彼女が俺の知らない顔で笑う。そんな気がして。

「俺……今のお前に会ってみたい。」

零れたひとり言は惧れとは裏腹な望み。

携帯を閉じ、ベッドに膝を抱えて首を預ける。

どうなるのかなんて判らないが、

きっと俺と彼女の一旦離れた時間が、

再び交錯して進み始めるのかもしれなかった。

交わるのか隔たれるのか……其れも定かでない。

其れでも現在の彼女に……ただ無心に会って見たかった。

青霧リシュ嬢

夜の海岸で。


じじいの言いつけは守ってる心算。

つか守らされてるのが正しい。

お袋が割りと喜ぶからそれなりに守る値はあるかもな。

ってわけで関賽から愛車を駆っての週末帰京再び。


何気に海を目指すのは俺の正しい癖なんだが。

丁度先客あり、………ついでにその先客に意識を向けたのは

妙な第六感が俺になんかを囁きやったせい。

序をいうとその女は誰かと話してる気配だった。


目が見えてるだけの妙ないでたちはアレだシェラザードだ。

制服着てたからうちの生徒なんだろうけどなー。

妙に謎めいた女で俺の感覚を夜のせいだとのたまった。

もしかしてアイツの能力とかそんな類かも知れんけど。

彼女は青霧リシュって名乗った。同学年らしい。

見たことは無いから俺が護法に留学してる間の転校生かもしれない。


ひょっとして俺の丸出しの好奇心に急に機嫌を悪くしたのか、

さっさと去って行った青霧嬢。―――それか単に時間切れ――

あんときゃ、妙に背中に軽い寒気を感じた気がするんだが、

俺的には心当たりが丸きり無い。

ちっと色々聞いちまったのは確かだが。


彼女が去った海岸で石を飽きるまで抛り、

何となく青霧嬢の印象を反芻した。

何処かで会ったか………?会ってるはず無いのにな。

それでも………うっかりって事はあるな。

なら………悪いのは俺か。


日曜は何やって過すかな。

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