ロードレーサー:カムテール断面の空力効果 | 長谷川隆のブログ 

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 昨年末、あるきっかけで「カムテール」形状を採用した自転車のフレームの存在を知りました。

 

 

*流線形での抗力(空気抵抗)低減と剛性(ペダルを踏み込んだ時のフレームの横曲げ剛性)確保と軽量化の三兎を追った断面形状で、軽い上に流線形そのままより剛性は高く、長いテールを持つ流線形と同じような空力効果が得られる、とのこと。

 なるほどー!そういえば東京五輪の時に、「ペダルを漕ぐ時の選手の動きから、フレームが柔らかそうだなぁ」と感じたのを思い出します。フレームの軽さと剛性と抗力低減の熾烈なせめぎ合いがあったのですねー。

 

 早速モデルを作って抗力を計測してみました。

・本来なら、同じ剛性を持つ形状同士で空気抵抗の比較をすべきなんでしょうが、とりあえず上図の様な形状での抗力比較をしてみました。ネットで見つけたカムテール形状での実験です。

 

・円形断面の抗力を1.0とした時、カムテール形状の抗力は0.61。流石にここでの流線形0.52と同じとは言えないですが、抗力低減にはかなり大きな効果がある様です。

・剛性、空気抵抗、の他にも、CFRPの肉厚(積層数)、積層作業の難易度、重さ、応力集中、抗断面崩れ性、コスト等々のバランスを追求する訳ですから、この世界も面白いでしょうね!

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 過去に、抗力低減のメカニズムを模索していた頃、物体のヘッド部にこのような効果はないものだろうかとか悩んだものでした。

 物体のヘッド部で、圧縮された空気が、カムテールならぬ、言わば カムヘッド  として抗力低減の働きをしないものかどうか・・・!?

 

 当時、完成したばかりの「揚力抗力測定装置」での最初の実験となりました。

 結果、流体中の物体のヘッド部には、”カムヘッド”による明解な抗力低減は見られなかったのですが、物体前面に高気圧域と後面に低気圧域が発生する「原理1」と、流れを曲げる際に力が作用する「原理2」の存在を考えるきっかけになったのでした。

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