「えぇ、どうぞ入って。」
井上は相変わらずへらへらしながら言った。
そしてアイツは入ってきた。やっぱりアイツだった。さっきの黒フード・・・
「カナダのヴィングナイト国際男子専門学園から来ました。黒田ルカです。」
その途端男共の雄たけびは消え、代わりに女たちの叫び声が聞こえた。
ホワイトブロンドの髪、青白い肌、整ったきれいで女みたいな、女々しい顔。驚いた・・・。ははははっ。顔だけでなく名前まで死んだルカと一緒だとはな。・・・ただなにかが違う気がする。そうだ・・・アイツの目の色だ。日本人離れした顔のくせに眼だけが闇のように真っ黒なんだ。俺にはその黒い瞳が妙に恐ろしく感じられた。どうせだったら眼までルカを完全にパクってほしかった・・・。なんて言えるはずもなく。俺は黒田をじっと見続けた。
「そうねぇ・・・。うちの学校はなぜか男子が多いから・・・。うーん。あ、山下君の隣なんてどうかしら。」
山下の隣かぁ。あそこは日当たりがいいんだよなあ。いいなあ。俺もそこがよかった。黒田は気に入るだろうと思ったのだが、黒田の反応は俺が予想していたものとは大きく違った。アイツは無言で俺のところに歩いてきて俺の隣の席に座った。
「あら、成瀬君の隣がよかったの?ならそう言えばよかったのに。恥ずかしがりがり屋さんなのね。」
こんの野郎・・・(怒)(怒)。へらへらと・・・。俺は嫌だったのにぃっ。これじゃ断れなくなっちまったじゃねえか!俺は大きくため息をついた。
「俺、成瀬領。よろしく。」
俺はルカに右手を差し出した。だが、黒田は会ったとき同様俺の手をはらった。見た目はそっくりなんだがなぁ。なんって残念な奴なんだ。
「さっきの人・・・。領って言うんだ。フン」
そんなことをボソッとつぶやいて黒田は鼻を鳴らした。アイツ俺を動物かなんかとでも思ってんのか?いけすかねぇ奴。俺はちょっとイラッときたので黒田と自分の机をずらして間をとった。するといきなり、
「じゃあ、朝のH・Rはこれくらいにして。解散ー!」
いやおいおいおい、待て。なんでそんないい加減なんだよ。まだ終わるまで10分以上もあるんだぞ?
「ちょっ・・・。先・・・。」
俺が口を開きかけた瞬間、俺の声は大勢の声に押しつぶされた。
「ねぇねぇっ。ルカ君ってどこ出身?やっぱ黒田だから日本?」
黒田の机には見事に女子共がむらがっていた。
「ルカくんて髪の色素うっすいね~。キレー。」
「黒田君ってさー。小さいころも綺麗だったんだろうねー。」
こりゃあ、全員黒田に《ホ》の字だな。
「ねぇ~。黒田君ってさルカって名前でも黒田っていう名字だからハーフなの?まぁ、帰国子女って言うくらいだからそうかぁ!」
黒田はというと・・・
「・・・・・・・。」
総無視。俺は女子という生き物のしつこ・・・しぶとさに感心しながらも少々いらだっていた。別に黒田に嫉妬しているわけじゃない。なんというかその、ほらもう少しで寝れるってときにいきなりめっちゃうるさいバイクの騒音が聞こえてきたときのあのカンジ!あの無性にイライラするあのカンジ!要するに、一言でいうと・・・・・・・・うるさい。大事なことだからもう一度言うが、別に黒田に嫉妬しているわけではない。・・・・・ない!俺が悶々とそんなことを考えていると、いきなりシルクのようになめらかな声が教室中に響き渡った。
「ねぇ。ちょっと黙っててくれない?いろいろ聞かれても困るんだけど。」
な、なんだ・・・。黒田か。誰の声かと思った。つーかこいつこんな声だったか?ってか、何様だよお前・・・。さすがにこの態度にゃ、女子も萎えるだろう・・・。
「「か・・・かっこいい・・・・」」
おおっとぉ。俺の予想の右斜め上をいく回答だ。これは予想できなかった。とっさに俺は口を開いた。
「お前・・・・黒田ルカ・・・だよな?」
俺はなにをいっとるんじゃっっ!無意識のうちに俺は意味不明なことを口走っていた。
「・・・・・?」
ですよねぇ。そうなりますよねぇ。なんかもうすみません。とっさに黒田が何か言おうとしたが、女子の声が先に響いた。
「何か問題でもあるわけ?成瀬。」
この態度の違いはなんですかー。なんかめっちゃ睨まれてるんですけどー。先生こうゆうのって、いじめって言うんですよね‼いじめダメ絶対‼
「・・・・っなんでもねぇ。」
俺は深いため息をつきながら窓際に歩いて行った。
いろんな事がいっぺんに起きて頭が混乱する。まず整理しないと・・・・。まずどうして黒田は二学期の半ばなんていう中途半端な時期に転校してきたんだ?しかもあいつは死んだルカにそっくり・・・・というか、瓜二つだし。あぁ―――っ。考えれば考えるほどわけわかんねぇっ!俺は窓の額縁に寄りかかって空を見上げた。今日の天気予報では晴れだっていってたのに、上空にひろがる空は青空とは程遠い黒ずんだ空だった。これから何かが起こる前触れのような感じだ。