1.黄禍論台頭から世界大戦へ
 1905年日露戦争における日本勝利により、黄禍論が強まり米国における日本人排斥の動きが強まる。1924年には遂に排斥移民法が成立し、WASP以外のアメリカへの移民を制限した。
 1929年10月NY市場の株価暴落に端を発する世界恐慌は、1934年に最高値の10分の1に株価が下落した。
 1941年の真珠湾攻撃により、翌年、在米日系人は強制収容所へ収容される。戦後も人種差別は米国社会に色濃く残った。

 私は戦前における日本の帝国主義政策にはもちろん批判的である。だが、最終的に日米が軍事的に全面衝突したのは、米国社会が孕んでいる強固な人種差別体制にも原因がある。

 現在、白人警察官による黒人逮捕時の致死事件を原因とする全米での暴動は、アメリカ社会が解決できなかった文字通り致命的な人種を基礎とした階層社会に対する反逆行動でもある。


2.ミルクポッドという嘘。人種による階層構造。
 アメリカは人種のミルクポッドなどと言われている。コーヒーに落としたミルクのように混ざり合っている、という表現である。いやいや、実際は「人種のサラダボールだよ」とも言われている。人種ごとに別れて固まっているのだそうだ。
 残念ながら、アメリカこそは人種によるカースト制社会である。社会的にアジア人は最下層に近い。
 白人は黒人を差別するし、黒人は黄色人種を差別する。


3.国内に持ち込まれる戦争
 アメリカの帝国主義は留まることを知らず、アフガニスタンやイラクやシリアでの戦争に加担している。国外で戦闘経験を積み、長期間極度の緊張状態を強いられた兵員もいつかは母国アメリカに帰還する。海兵隊は「沖縄」から出撃し、帰国前に「沖縄」で冷却期間を過ごすという。
 帰還兵のPTSDを描いた映画は数多く、最近では「アメリカン・スナイパー」の主人公は帰国後に、復員してきた傷痍兵の介助者として活動していたが、介助していた復員兵の一人に殺されて話が終わっている。
 
 今回の警察官の暴虐行為の原因にも戦争経験があるのではないかと言われている。本人は軍人としての経験がなくても、取り押さえた相手が元軍人として軍務経験があれば、中途半端な対応では致命的な反撃を受ける可能性が捨てきれない。結果として拘束時に過剰な対応をしてしまうというのだ。

 実は、1923年の関東大震災時の虐殺は、軍や警察による組織的動きと同時に、日清・日露戦争経験者による自警団としての行動も拍車をかけた。
 戦地では敵国人に容赦せず命を取る。自国に帰ってきても、かつての経験は記憶に残り、自身を支配する。戦地で殺人を行った経験は、殺人への抵抗力を大きく削ぎ、容易に殺人が行えるようになるのである。

 軍務経験者により戦争が国内へ持ち込まれるのである。この構図がアメリカ社会を破壊しようとしている。


4.既に米中は対立に入りつつある。
 米国は対外債務を負っている。借り手は低姿勢なのが世の常だが、アメリカは違う。米国債を巨額保有している中国に対して、経済制裁を行っている。
 米国は交戦国に対して米国債の無効を宣言できると言われており、わざと戦争状態へ持っていこうとしているのではないかと、穿った見方をする人もいる。
 だが、国際情勢を分析している識者は、トランプ政権による対中姿勢は外交上の威嚇に過ぎないと見ている。決定的な米中経済対立には至らないという。
 しかし、カナダで監視下におかれているファーウェイ孟副会長が米国への身柄引き渡しが現実味を帯びる中、中国は米国からの穀物の輸入制限に踏み切ることを発表した。

 あまり報じられていないが、石垣島や宮古島は軍事要塞化が進んでいる。国境付近における軍事力強化は国家間の緊張を生む。
 特に日本は中国と経済的に深く結びついており、先日封鎖された武漢には日系企業の工場もたくさんある。武漢は船で遡れる長江の終点に位置しており、陸路の結節点もあるので、工業都市でもあると同時に物流の拠点都市でもある。
 であるから、対中国的に軍事力を増強するのは得策ではない。仮に防衛力を高めるにしても、国境には最低限の軍事力だけを置いて、国境から離れた地域に部隊を駐屯させるべきなのである。

 だが、米国は日本を中立の立場でいることを許さない。将来米中が軍事衝突するときは、日本を米国側として「参戦」させるだろう。それどころか、日中を争わせて米軍は高みの見物をする、とみる向きもある。

 未来がどのように推移するかは分からない。少なくとも短期的にはコロナ禍・米国内乱・米中対立と悪い方向へ向かっている
 日本政府が今後どのような「決断」をするのか。現政権による悪手を打たせることは避けなければならないし、現政権が存続すること自体が「悪手」である。
 総人民が現政権を倒し、情報流通の主導権を獲得しなければ、「破滅の縁」からの生還はあり得ない。