日産の当時の塙社長がゴーンを社長に迎い入れて、組織再構築を断行した。
しかし、この初手からして問題がある。
まず、塙社長がやるべき仕事を他の人物に任せるのなら、社内生え抜きの人物に当たらせるべきであった。なぜなら、内部の事情に最も詳しいからである。
もし、内部の人物でできないのなら、人員削減を含む組織再構築だけを外部に委託するべきだった。コンサルティングという名前の首切り屋を使うのである。
 
 そもそも、膨大な人員整理や工場の閉鎖が必要だったのか疑問もある。需給の変動に対応するためにも、自動車産業こそは余剰の生産設備を保有することが重要である。
自動車産業の要は生産工場の確保にあったはずである。

 ルノーの再生を行った人物であるゴーンなら日産を再生できるだろう、ということで、誰かに吹き込まれたのか、経済誌の提灯記事に騙されたのかわからないが、ゴーンを社長に据えて、長期的に日産は再生したのか?
 この点も疑問が多々ある。

 純粋電気自動車のリーフは5000億円の開発費をかけたが、初代リーフは6年間で24万台しか売れなかった。新車価格400万だが、中古が40万円で叩き売れれて話題になった。実質航続距離が短いので、実用性に乏しいのだが、近所に買い物にしかいかない見栄を張りたい人が中古車を買ったらしい。
 新リーフは航続距離が倍になったというが、新車の値段を考えると費用対効果が悪すぎることには変わりが無い。

 電気だけで駆動する純粋電気自動車に分があるのなら、年間開発予算が日産よりも巨額のトヨタやホンダが真っ先に製造販売するだろう。しかし、今の所声なしである。
 トヨタは亜鉛空気電池の開発を急いでおり、現在のリチウムイオン電池よりも5倍の蓄電量を誇るらしい。要は二次電池性能が現状のままでは純粋電気自動車は実用性に乏しいと踏んでいる。
 希少元素のリチウムを車に使うことにも問題がある。ノートパソコンは4セルとか6セル相当のリチウムイオン電池を積んでいるが、自動車だと6000セルとか積載するそうである。つまり、自動車1台でノートパソコン1000台分である。
 電気自動車が増えると、リチウムの需要が激増して、リチウムイオン電池の値段も跳ね上がる。
 トヨタが亜鉛空気電池の開発を急ぐのはレアメタル・レアアースではなくて、ベースメタルの亜鉛を使う電池を使わないと、膨大な自動車での需要を満たせないと考えているのかもしれない。

 日産はエンジンで直接車軸を駆動せず、エンジンで発電を行い、モーターで車輪を駆動する方式の車も発売している。
 しかし、これは登坂力にガソリン車に劣り、ツィッターには富士山五合目で時速が30kmに低下したなどと報告が上がっている。エアコンを併用するとパワーダウンが顕著らしい。
 ガソリンの爆発力を直接動力に変換する方式に対して、電気モーターで駆動する方式は動力高率で劣る。しかし、発電所から架線を引いて、架線に接触した状態で走れば、少なくとも2次電池の蓄電損耗は抑えられる。また減速時の回生エネルギーを送電して、他の車輌で使える・・・。これが電車である。本来の電気自動車である。


○ハイエースvsキャラバンホーミー
 日産を批判しても私に利益はない。それどころかトヨタの対抗馬を批判すれば、トヨタを利するだけである。
 1Boxの貨物車両となると、ハイエースの1強状態なのである。
一時期はハイエースvsキャラバンホーミーで9対1までシェアの差があったが、これが7対3まで日産が盛り返していた。
 自動車修理工場の人が言うには「とにかくハイエースを買え」ということで、どちらが優れた車両なのかは言わずもがなだが、販売店を統合して赤か緑できれいにカラーリングしてデコレートしたりした効果なのか、日産が一定程度復活していたのは確かだろう。
 しかし、そんなことはゴーンでなくてもできるわけで、他社の様子を真似するだけの話である。
 笑えないのは大阪ではハイエースの盗難が頻発するので、盗難を避けるだけのためにキャラバンホーミーを買う、という需要層が存在するそうである。

○日産の財務内容が悪化
 日産の有利子負債は増加しているが、資産は増えておらず、新規の借入金は開発費に消えたと見られている。財務内容は悪化しており、結局、日産は再び危機を向かえつつあった。特をしたのは巨額の報酬を受取り続けたゴーンだけである。
 また、ゴーンは日産の開発部門をルノーと統合しようとしており、これによって、日産の開発人員が社外に流出しつつあったようであり、日産の企業としても体力も漸減しつつあった。


○カルロス・ゴーンの逆襲
 しかし、ゴーンを社外に出すのなら、一定の手切れ金を渡して円満に解決するべきだった。ゴーン騒動で被った日産の風評被害は莫大なものになっていると思われる。
 ゴーンの方も、単なる「首切り屋」巨額の報酬を長期間受け取ることに対する信義上の問題を考慮しない傲慢な姿勢は批判されてしかるべきである。

 郷原信郎氏が指摘する通りに、仮にゴーンの報酬受取に関して、特捜部が刑事責任を問えないことが本当だとしても、日産の経営は再び傾きつつあったのであり、ゴーンは巨額報酬を受取る権利もないし、ゴーン自身がなんらかの責を負うべき立場であったことは確かである。
 結局、日産はゴーン騒動による風評被害に苦しむ上に、ゴーンが今後仕掛けてくる逆襲で更なる風評被害を負うことになるだろう。