巨人の日本一へ向けた補強は、ほぼ完了。「シーズン100勝」の呼び声も高い豪華布陣となったが、その実力やいかに? 野球解析で3回にわたって来季の戦力を丸裸にする。最初の標的は、獲得に異論も多いラミレス(前ヤクルト)だ。

 米球界では選手の評価に広く野球解析が用いられている。攻撃で何点貢献したか、守備で何点貢献したかは各種の指標で数値化。カブスが福留(前中日)を4年総額54億円と高く評価したのも、福留がここ数年、こうした指標でずぬけた数字を記録したからだ。

 福留にラブコールを送りながらマネーゲームに敗れた巨人は、代わりに今季セ打点王で打率2位のラミレスを、2年総額5億円で補強する。

 だが、北海道在住の野球解析家、道作氏はその実効性を怪しむ。

 「来年もラミレスは、打率・本塁打・打点といった前時代的な指標では景気のいい数字が並ぶかもしれない。しかし、どれだけ得点力の向上につながるかは疑問です」

 同リーグの平均的な選手と比べ、攻撃で何点上積みしたかを表す総合指標「XR+」で、ラミレスの日本での7年間を顧みると次のようになる。

 〔1〕8.88〔2〕10.95〔3〕37.66〔4〕11.39〔5〕2.88〔6〕マイナス6.09〔7〕32.75

 「外野手で、かつ守備が得意でない選手にしては物足りない数字。波も非常に大きく、昨季はマイナスまで記録した」

 貢献度が低い最大の原因は選球眼の悪さだ。204安打を放った今季も四球は23個だけ。ちなみに今季最多の中日・ウッズは121個を選んだ。

 さらに今季の守備を得点換算すると、「平均的な選手より8点余計に失っている」。過去7年間の守備が今年並みとすれば、攻撃と守備の収支がほぼ相殺されるか赤字になった年が5回、大きく黒字だった年が2回だ。

 道作氏は「来季どちらに転ぶかは不明だが、かなり値段の張る選手だけに、あまり分のいい賭けではない」とみる。

 外野の守りに与える影響も深刻だ。首脳陣が構想する左翼・ラミレス、中堅・谷、右翼・高橋由という布陣の危うさは数字が実証している。

 どれだけアウトに寄与したかで守備を評価する指標「レンジファクター」において、今季12球団の左翼レギュラーをみると、ワーストは〔1〕金本(阪神)〔2〕谷(巨人)〔3〕ラミレス-の順だった。

 道作氏は「今季のヤクルトは中堅の青木に左翼のカバーで負担がかかった結果、青木の数字が悪化した。さらに守備位置が少し左にずれることで、右翼のガイエルまで不自然な守備機会が増加したようだ」と話す。

 それぞれ故障を抱える谷と高橋由が、守りの負担を増やしてシーズンを乗り切れるのか。そもそも今季の守備指標でラミレスにも劣った谷に、青木のような役割を求めるのはムリがないか。

 もたらすマイナスが大きい分、ラミレスの打棒が爆発しないようでは、日本一どころかリーグ連覇にも黄信号がともる。