待ちに待った選手会長の帰還を知らせる『パイレーツオブカリビアン』のテーマ曲「He's A Pirate」が11日、約半年ぶりにグッドウィルドームで流れた。
「おかえり~!!」
 四方八方から飛ぶ、ファンからの熱い声援を背に打席に向かった赤田将吾は胸に込み上げてくる想いをグッとこらえた。2007年シーズン開幕前に左足を肉離れ。さらに故障が癒えかけた4月中旬に今度は右肩痛を発症。本当に長いリハビリ生活を経て、再びグラウンドに戻ってきたのだ。
「あのころの生活を考えると、こうしてグラウンドに立っているのが、まるで夢のようです」
 この半年間は、故障が治りかけては再発の繰り返しだった。その間、チームは裏金問題、6月の10連敗、26年ぶりのBクラス転落の危機と嫌なことが重なった。それでも、赤田ははやる気持ちを抑え、じっとそのときを待ってきた。

 この間、絶え間なく笑顔で過ごしていた点に赤田の人間性を強く感じる。ファームには明日の1軍を夢見るヤングレオたちが大勢いる。そんな後輩たちに、無駄な気を使わせたくない。選手会長として、若手の手本となるよう努めて明るく過ごしていた。そんな赤田を心配したファンも、イースタンの試合に足を運んでくれた。
「ファンとこうして身近で話せるのも、こんな時しかないですからね。こうして僕のために足を運んでくれるのも、本当に有難いことですし、僕にできることはしてあげたいって思います」
赤田は、試合後に声をかけてくれるファンと気軽に談笑する。昨年からファンサービスにも積極的に取り組み、ファンを第一に考える彼の一面が垣間見えた。

クライマックスシリーズ進出の可能性を信じて

 9月11日、グッドウィルドーム。いつもなら青く埋め尽くされるはずの外野席には空席が見え始め、ライトポール付近の内野自由席には数えるほどのファンの姿しか見られない。残り20試合を切って、3位・千葉ロッテとは8.5ゲーム差。ファンも奇跡が起きるのをあきらめてしまったのだろうか。いや、そうじゃない。右翼席には、それでも奇跡を信じるファンのボードが掲げられ、いつも以上の熱い声援がグラウンドに送られた。
「声援はしっかり届いていますよ。今日、球場へ来てくれたファンは奇跡が起きるのを、きっと信じてくれているんですよね。僕も、まだ始まったばかりなんで、あきらめることなんて全然考えていませんよ」
 そう言った赤田の口元から白い歯がこぼれた。

 11日のソフトバンク戦では1対8でチームが大敗、赤田は4打数0安打3三振に終わると、試合後、室内練習所に直行し、約40分間に渡って、自身の打撃フォームをチェックした。そして、翌12日のゲームでは、「せっかく帰ってきたのに3三振とチームに迷惑をかけてばかりなので、『今日はやってやろう』って想いで球場へ来ました」と、3安打猛打賞の活躍。「1、2番で6回出塁しろ」という伊東監督の期待にもしっかり応えてみせた。

 もちろん、あきらめていないのは赤田だけじゃない。11日に代打で出てきた栗山巧は大差のついた場面でも、後続につなぐヒットを放ちチャンスを広げた。敗戦後、ベンチへ引き揚げる際、やり切れない想いで顔を震わせた。「まだ終わっていない」と自分に言い聞かせているようだった。
 9回に代打を出された片岡易之もそうだ。11日は自身の力不足を悔やむように重くなった足を前へ進めた片岡だったが、翌12日のゲームではいつもの積極的な走塁で、赤田とともに幾度もチャンスを広げた。だれ一人あきらめた様子なんて見られない。
 12日、ソフトバンクに前日の借りを返して8対3で快勝し、お立ち台に上がった赤田は「今日の試合が、本当のウチの試合だと思うので、これを残り試合続けて、全部勝つようにやるだけです」とファンに力強く宣言した。

 今日、13日のゲームではエース涌井秀章が必勝を期してマウンドに上がる。彼もまた奇跡を信じて疑わない。この期に及んでプレーオフ進出の可能性など書いたら、それこそ野球を取材する者として失格と思われるかもしれないが、私も選手たちと同様に、その少ない可能性を信じたいと思う。
「(日程の)最後の最後にロッテ戦とソフトバンク戦が残っていますよ」と、球場を後にする赤田にそんな言葉をかけてみた。すると、「ニッ」と不敵な笑みを返した赤田。そのとき、“暴れん坊将吾”が帰ってきた――そんな気がした。
昨日も今日もスタンドは空席ばっかりでしたね
今年は西武にいろいろな事があり、数字的に厳しい事は間違いないですが
奇跡を信じて疑わないファンが1人でもいる限り、選手が諦めたらダメですからね
優勝が、クライマックス出場が無いからといって、手を抜く選手はいないと思います
選手にとって1試合でも、見に来たファンには一生に一度の観戦かもしれないので
その人たちに良い試合だったと言ってくれる試合を期待したいですね