感激のヒーローインタビューは幻と消えた。ベンチで見せた初々しい笑顔も、試合後は当然のように消えていた。「プロ1号? チームが負けたので…」。3連敗の衝撃にも手応えは消えない。3年目の江川が大砲としての一歩を踏み出した。

 右すね負傷の柴原に代わって、右翼で今季3度目の先発出場。「何とか期待に応えたい一心だった」と、第1打席でいきなり答えを出した。先頭の3回だ。カウント1-1からど真ん中の直球を左翼席に運んだ。プロ通算54打席目の初アーチに自然と顔が緩んだ

 「ホームラン1本でヘラヘラできるような立場ではないけど、本当にうれしかった。甘い球を見逃さず、力まずにバットを振り抜けた」

 吉井がドラフト2位で近鉄に指名された1983年、江川は生まれてもいない。メジャーのマウンドも踏んだリーグ最年長の41歳右腕が、まだ実績もない20歳にムキになった。再び同点とされた4回2死満塁で、初球から3球連続で内角攻め。フルカウントからの6球目、この日最速の141キロの低め直球をはじき返した。前進しかけた中堅平野の頭上を越える3点三塁打は、チーム24イニングぶりの適時打。「2アウトからいい追加点が取れた」と、この日のチーム全4打点をもぎとった。

 ダイエーホークス最終年の04年秋、ドラフト1巡目指名で入団した「ソフトバンク」1期生。当時、入団発表のためだけに作製されたダイエーの背番号「8」のユニホームは、実家のたんすにしまっている。「いつか、お宝になるような活躍をしないといけませんね」。ヒーローになり損ねたものの、背中の「8」は確かに輝き始めた。

 終盤に試合が荒れる中、ホームランボールは手元に届けられた。笑顔は封印した江川も「大事に飾っておきます」と、かばんに忍ばせた。「すごかった。すごかったですよ」と王監督。若き大砲が、ストロング打線に新たなエネルギーを注入した。
主力の度重なる怪我での離脱
この危機を乗り越えるには、若手の活躍が絶対に必要です
城所・正太郎・大野など、若手は1軍の壁に阻まれてます
その中で結果を出した江川
この1試合で終わってもらっては困ります
若手の頑張りに、チームも勢いに乗って勝利をつかんで欲しいです
今の流れを早く変えて欲しいですね!