テストは1球で終わった。6回2死、右打席の荒木への初球。新垣がこの日、初めて投げたシュートがすっぽ抜けた。「マズイ」。鋭い回転音を立て、144キロのボールは荒木のヘルメットのわずか数センチ後ろをかすめる。2球目、失投気味のド真ん中への直球をとらえられた。結果は左飛。「詰まったから、多少(シュートの)イメージはあったのかと思うけど…。次の打者の反応も見ない限り、効果は分からない」。あやふやな手応えを最後に、新垣-山崎のバッテリーがシュートを選ぶことはなかった。

 新球シュートを最大の課題に挙げた中継ぎでのオープン戦初登板。荒木への“ヒヤリ”でリズムも狂った。連打を浴び無死一、二塁となった7回。中村一を外角直球で投ゴロに打ち取った場面では、セオリーでは二塁へ転送して併殺を狙うところを慌てて三塁へ。二走鎌田は封殺したが送球は乱れ、あわや無死満塁という判断ミスだった。杉本投手コーチは「恥ずかしいよ」とため息。3イニングを毎回の3奪三振、無失点で投げ終えた本人も「地に足が着いていなかった」と頭をかいた。

 春季キャンプではブルペンの打席に立つ城島似の人形「ケンジ君」の首を何度もぐらつかせ、紅白戦では松田にぶつけたシュート。登板前のブルペンではコースに決まっていたが、肝心の実戦マウン  ドで手元が狂った。ケンカ投法を期待した王監督も「荒木のあの1球がねえ…」と拍子抜け。「試合で投げていかないと。ぶつけることを怖がっていてはダメ」と注文をつけた。

 新球の可能性を「オープン戦で見極める」という新垣は「捕手のサインが出なくても、首を振ってでも投げないと」と戦意は失っていない。次回の先発予定は8日のヤクルト戦。今度こそ打者をのけぞらせる。
打者に当てるのを怖がってたら投手はやっていけないですからね
新垣にはシュートを使ってもらい左右の揺さぶりで
15勝以上を期待してたんですが、残念です