「え-と..此処まで大掛かりなものなんですか?」
「悪ィな,これで全員だぜッ!」
「おいノエル,コイツなのか次のターゲットってのはよ-..」
リヴェルら4人がウンディ等に合流すると,やや見覚えのある制服を着た男子学生と一緒にいた.突然人数が3倍に増えた挙げ句,ターゲットという単語に彼は戸惑いの表情を浮かべる.




「た,ターゲット?俺がですか?何の?」
「つ-かコイツ他所の学校の奴だしよ-..そもそも誰だてめえは?」

男子学生の問い掛けには答えず睨むように生徒を見遣るリヴェルに,マリアが呆れた声を浴びせた.

「リヴェル,初対面の相手にその呼び方は無礼だろう」
「ああ?煩ぇよマリア,てめえは俺の母親か!」
「フン,お前の母親なんて御免だ」
「あ,あの,2人共今は揉めないでください..」

やや剣呑になるリヴェルとマリアに慌てて仲裁に入るウンディであったが,

「てめえは黙ってろウンディ!!」
「は,はいぃぃ,すみません..」
「悪いこともしていない女を怯えさせるなんて,男としてどうかと思うぜ-」
「あ゛?てめえは俺の何なんだよノエル」
「ふ-む,性格が短小っつ-事はリヴェルのリヴェルも短小..」
「こら,他人の前でそう下ネタを発するなノエル」
「..てめえも何マジで突っ込んでんだよマリア」

....遂には男子学生をそっちのけにしながらノエルまで巻き込み,本題からずれてしまっていた.その光景にやれやれといった感じでジェームが溜息をつき,学生に向き直る.




「..御免ね御兄さん,この人達いつもこんな調子だから気にしないで.嗚呼,ボクはジェームって言うんだけど.」
「アタシはスレイグ.貴方は?」

「..嗚呼,ヴィヴアンハイスクール3年のナルサスです.宜しく」

ナルサスと名乗る少年は其処で初めて表情を和らげた.明るめの茶髪を短めに纏めている,爽やかな印象を与える好青年だった.なかなかの筋肉質だが背もリヴェルと同じ程度はあり,骨格も良い,所謂スポーツマン風の生徒である.また,顔立ちは素朴ながらも整っており,その爽やかさに拍車を掛けていた.






「それでその--..赤い薔薇がどうかしたんですか?」



「うん...ねえ4人共,この辺の聞き取りはボク達の仕事じゃないよッ!」



1度目を伏せるも直ぐ様その性格からか匙を投げるジェームは,ことのほか言い争っていた4人を本題に引きずり戻す事に成功する.
同じく面倒そうにリヴェルが応じた.



「ったく,てめえのサボリ癖も大概だなジェーム..にしても,何だってウチじゃねえヴィヴアンの奴に薔薇の花束が行くんだ?益々意味分かんねえよ」


しかし,そのリヴェルの一言にナルサスは怪訝そうな顔をした.




「え,花束?俺,花束は貰ってないんですけど..」




















「「「「ええッ!?」」」」















その言葉に後から合流した4人は一斉に驚きの声を上げる.そしてその矛先は彼等を呼び出した2人..主に会長に向けられる事となった.


「ったくウンディ!ノエル!!嘘なんざつくんじゃねえよ!!」
「ち,違うんですッ!!これは,その..」


詰め寄るリヴェルと怯えるウンディに,慌てた様子でナルサスが付け足した.

「あ!嗚呼,でも薔薇の花は貰ったから!!」
更に場を読んだらしいノエルが補足する.


「そうそう!1輪だけらしいんだけどよ!!」

「「「「1輪-?」」」」



しかしその補足により,尚の事4人は混乱する羽目になった.

「すまないノエル,一つ確認するが..それは此方の調査しているものと別件ではないのか?」
「ちげ-んだ!ちゃんとメッセージカードもついてたんだってよ」
「あら,因みに何て書いてあったのナルサス?」
「え-と..'次はマリーゴールドを贈ります'って..」


そのナルサスの言葉に,2人が興味なさそうに溜め息をついた.
「おいおい,明らかに俺達のとは無関係じゃねえかよ」
「本当に,とんだ無駄手間だったみたい」


「まあリヴェルもジェームも落ち着け.それで,その花はいつ届いたんだ?」

マリアが宥めながら話を進めると,ナルサスが記憶を辿るように目を伏せる.



「一昨日,かな」
「ふむ,一昨日か..」



「時系列的にはレイラと重なる部分もあるわね」
「じゃあやっぱり別件なんじゃねえのかよ-」
「いや,そうとも言えん.それが犯人の思惑だとしたら,だ」
「そいつは考え過ぎな気がするけどよ-..何てったって状況が違い過ぎんだろ」
「ボクもリヴェルに1票.流石にこじつけなんじゃない?」


口々に言いたい放題のオリンビアハイスクールの連中にナルサスが遮るように口を挟んだ.


「ちょ,ちょっと待って下さい!何なんですかさっきから花束とか犯人とか!!俺の赤い薔薇が何か問題なんですか?」









その問い掛けにばつが悪そうにスレイグが髪を掻き上げる.

「..外部に知られるのはあまり得策とは言えないわね」
「けどよ,さっき俺達に話してくれたよな?薔薇を貰うような事もないって」
「そりゃあ,..貰った事もないですし.だから教えて下さいよ」
「そうなんだ,ふ-ん.御兄さん案外モテそうなのにね」
「そ,そんな事は..」
「アンタも照れてる場合じゃねえだろうが.兎に角,コイツを4人目と考えた方が良いってのは間違いねえんだろうなァ,ウンディ?」
「はい,きっと..」






「..分かったよ,会長が言うなら仕方ないね」
「ハァ..気が乗らねえが少数派じゃあなあ..」









*****






「れ,連続事件んんん!?」







「馬ッ鹿野郎!声がでけ-よ!!」


「お前の声も十分響いているが,リヴェル?」

「俺は良いんだよ俺は!」

「でも..そんな..俺,誰かに恨まれるような事はしてないのに」


突然の事態に気後れするナルサスをジェームが宥める.



「だから,確定じゃないんだよ.花の数やメッセージカードの文言は全然違うから全くの無関係って可能性もなきにしもあらず,なんだけどね」
「生憎,うちの会長殿は石橋を叩かないと気が済まないようでな」
「ま,大抵誰だって自分コイツに恨まれてる-!なんて思わないモンだよな-.だから尚更放っとけなかったって訳さ」
「話せる事情はきっと此くらいよ.生憎だけど」
「そんな!それだけだとアバウト過ぎませんか!?俺はどうすれば..」


「ん-..取り敢えず,暫くは諸々気を付けてって感じかなあ」
「それだけ!?」



「..そうだ!ではこうしましょう!ナルサスさんは私達の全員に連絡先を教えて下さい.そして,毎晩私達の誰かから無事か確認の連絡をしますから,そこで無事を知らせて下さい.私達は当番制にしましょう?」

「れ,連絡先を,ですか..?」


閃いたようにポンッ,と手を打つウンディに,ナルサスは怪訝そうな顔をする.その目には微かな警戒心も見て取れた.

「成程,確かに初対面の相手に連絡先を伝えるのは気が進まないものでもあるな」

ナルサスに聞こえないように呟くと,徐にマリアはナルサスに己の顔を近付け....白く細い指先で彼の顎を持ち上げた.
至近距離で真っ直ぐに目の前の相手を見つめるその雰囲気は,かなりの色香を放っている.

「......嫌か?」

「え,え-と,嫌って訳じゃ..」
「だそうだ,良かったな会長殿?」

完全にその色香に充てられたナルサスにすかさずそれを利用するマリア.彼女は呆れたような目を向ける仲間を黙殺すると手早くスマホを取り出した.



















***********



「じゃあ,何かあったら直ぐに言ってくれよな!」
「ノエル..有難うございます」
「あ,あの!気を付けて下さいね.念のため..」
「勿論.俺の方こそ迷惑掛けます」



小さく頭を下げるナルサス.手を軽く振って生徒会役員と別れた.



























***********



それから8日後の夕刻,レイラやメイ,イライザへの聞き取りを進める一方,有力な手掛かりは得られないまま,6人の捜査は暗礁に乗り上げていた.

「なァ会長-.今日はあのナルサスと連絡したのか?お前当番だろ」
「は,はい.先程無事を確認して..」









































しかしその日の夜,2つの事件が起こった.





























1つは,ナルサスが何者かに襲われ,かなりの重症を負ったこと.























そしてもう1つ.










「......ひッ!?」
















差出人不明の脅迫文が,ウンディの元へ届いたのだった-----