Sside

 

俺は、たぶん叫び声をあげたのだと思う。

 

たぶん、と思うのは、意識が半分以上此方になかったからだ。

どんなに手繰り寄せようともがいても、力を入れようとしても、何一つできなかった。

 

 

 

俺の上を通り過ぎた、潤との時間。

 

 

 

・・・気が付いたとき、互いにハダカではあったが、穏やかな朝だった。

シーツに触れる肌はサラサラとして、俺は潤の腕の中にいた。

瞳を閉じた潤はまつげの長さが際立って、見るたびに思う「天使の寝顔」のようだ。

腕の中から抜け出そうと身じろいだ時、体の芯が重くしびれていることを感じた。

 

 

 

(じゅん・・・)

 

ただ、その名前を呼びたかった。

なぜ?と問い詰めたかったわけでも、ののしるために大声を上げるためでもなく、ただ、名前を呼びたかった。

声に出さなければ届くはずもないのにも関わらず、心の中でそっと呼びたかった。

 

 

 

体を起こすと、カーテンの隙間から日の光を感じる。

素っ裸のままシャワーを浴びようと隣室に行くと、備え付けの椅子の背にシンプルなサマーニットとスラックスがかけてある。

傍らには昨日の革靴ではなく、新品のけれど履き心地のよさそうなスニーカーと靴下があった。