レヴイ=ストロースを読もうと決めたのは、「哲学と宗教全史」出口治明著 ダイヤモンド社を読んだこと。ゾロアスター教から始まり、最終章の〈20世紀の哲学者〉の最後にレヴイ=ストロースを紹介している。レヴイ=ストロースの名は知っていたが著書を読んだことはなかった。
出口学長が「哲学と宗教全史」の最後に選んだレヴイ=ストロースの考え、「社会の構造が人間の意識をつくる。完全に自由な人間なんていない」
戦後の日本という社会が現在の日本人をつくり、江戸時代の社会が江戸時代の日本人をつくった。同じ日本人でもまったく異質です。と例えてます。
「世界は人間なしに始まり、人間なしに終わるだろう」名著「悲しき熱帯」の最終章にある名文です。
出口学長はこの二つの考え方は、現在の自然科学において正しいとあります。不知の自覚者でも正しいと思う。
著書の最後に、レヴイ=ストロースは、「人間は自由な存在ではないし、主体的にも大した行動はできない」との認識を示しました。この徹底的な唯物論の割りきった思考が登場したことで、人間の思考パターンはほとんど出尽くしたように思われます。と締め括ってます。
これは読まねば、と思ったのであります。

「構造の人類学」川田順造他訳 みすず書房
税込で7260円、ビンボーなんで図書館で借りる。重い、厚い。二週間で読みきれるか?心配になる。4日間の休日に5時間づつ読み、なんとか完走できた。
この書はレヴイ=ストロースの論文や講義を集めたものです。だから対象としている人達は民族学や社会学を志す、優秀な頭脳を持つ人達です。
ほぼ中卒の知力しかない不知の自覚者が手にする本じゃない。以前なら途中下車してたでしょう。しかし、この書に手をつける一月前、ソシュールの「一般言語学講義」町田健訳 研究社 税込3850円
この書籍も高いので図書館から借りました。ビンボーなんで。

ソシュールを知ったのは「哲学と宗教全史」です。
20世紀の哲学者、出口学長は5人を選んでるのですが最初に登場するのが、言語学者ソシュールです。近代言語学の父と呼ばれている人です。
日本語ではマグロとカツオを分けるが、英語ではツナの一語で分けない。その地域ごとに住む人達が世界をどう区切るかで、事物についての認識が成立する。世界をどういう記号で区切るか。それが世界を規定しそれぞれの世界像をつくっていることを、ソシュールは初めて見抜いた。と、出口学長の説明です。面白いと思い読もうと。
ソシュールは生前に著書を1冊も残してなく、彼の弟子逹が講義を写したノートを持ち、彼の講義を再現したのがこの書籍です。
「構造人類学」と同種の著書です。
「構造人類学」より少し楽だったのは軽くて、厚みもそれほどなくて、持ち出し易かったこと。

言語学を学ぶ生徒たちへの専門的言葉。出てくる単語、記号は仏語とラテン語が主でたまに英語。英語の知力は義務教育で終わっている不知の自覚者に解るはずない。
苦痛だったが、読みきった、
これで免疫がついたのかも。

長々と脱線しましたが、レヴイ=ストロースはソシュールの考え方に影響を受けたと、出口学長の説明。それでソシュールを読もうと。

「構造人類学」で理解したのは、民族学には言語学の助けが必要である。当たり前なんだが未開人の言葉を理解しないと多くを知り得ない。ソシュールから学ぼうとしたのだと思う。
社会学も関わる。歴史学も。本当に当たり前なのだが読まないと解らなかった。それと婚姻制度のあり方が重要な研究対象になっていること。部族によって婚姻制度が変わる。これをうまく説明できればいいのだが、説明できるほどに理解できてはいないのね。

「悲しき熱帯」川田順造訳 中公クラシックス
この書を読みたいと思ったのは、名文「世界は人間なしに始まり、人間なしに終わるだろう」を読みたかったから。実際の著書で読みたかった。

出口学長は「悲しき熱帯」を名文で知られると記している。フランスで最も権威のある文学賞のゴンクール賞の選考委員会が、この書がフィクションでないことを残念だと、正式に表明したとある。
名文なんだろう。それを読み取れない俺。
2巻あるのだが特にⅠでは、未開人の観察を行うまでの成り行きを記すのが大部分を占める。なので、風景や心情や人の風貌などの描写が多い。
未開人の観察や道中の困難な過程の動きある文章は理解し易いのだが、静的な描写や形容を理解するのが苦手なの。風景は特に駄目だ。画が浮かんでこない。そんなで名文を堪能できず。残念。
1930年代のブラジル、未開人が棲む地まで荒地を荒野(セルタウン)を命懸けで進む。ロバに乗り牛に荷を背負わせ、荒天の中を、急流の川を渡る。
そういう描写部はすっきり画になるのだが。

部族の中には半族と呼ばれる人達がいる。外婚部隊というのが一番解りやすいか。これも上手く説明できない。近親婚を防ぐための仕組み。

婚姻制度は部族が永続するために大事な決まり事なんだ。と知る。

年譜を読む
生誕100年の時、サルコジ大統領が訪問したいと申し込むが、何度も断るが、サルコジ大統領は了解を取らずに訪問してきて、写真を撮られた。日本の新聞にも掲載されたそうです。2008年。
2009年没
アカデミー・フランセーズの会員である人物はしばしば国葬されるそうです。レヴイ=ストロースは一番若く会員になり、その業績から国葬になるべきなのだが、本人の遺志で埋葬の翌日に死亡を公表。一民族学者ですね。サルコジ嫌だったんだろう。

レヴイ=ストロースは同年代のサルトルを批判していたと。出口学長が記していた。
サルトルはパリにいて、夏に2ヶ月のバカンスを取り思索に自由に耽り、「自由な人間が主体的に行動することで世界は変わる」と云う。
レヴイ=ストロースと真逆ですね。
俺はレヴイ=ストロースの考察を是とします。

「哲学と宗教全史」で出口学長が評価していることは正しく、不知の自覚者でほぼ中卒の俺でも理解できる文章で書いてくれている。だから、この書で満足してもいいのかもしれない。
俺の理解力では出口学長のレベルまで届くのは無理だ。
それは解っていても、やっぱり自分でその書を手にし悪戦苦闘しようと思う。
「哲学と宗教全史」に全ては書ききれないからね。