妹の次の日
失語症の夫が腎不全で
病院で亡くなった。
安らかだった。
覚悟の決まった
一点の曇りのないお顔だった。
充実感を帯びた顔に
理想的な死に方を
学ばせてもらった。
あのような穏やかな感情で
それで、いいんだ。
夫の最期の病室に
お世話に入ってきた
看護婦さんの名札が
目に飛び込んできた。
妹と同じ下の名前・・・
妹を守るために
妹を支えるために
妹を怖がらせないために
妹の役に立とうと
夫は妹の彷徨う魂を
ガイドしようと
自ら体から離れたのではないか
そういう思いやりと
責任感のある男の中の男だった。
二人が半日違いで
亡くなった後、
私には一緒に悲しむ人がいないと思っていた。
私は独りぼっちで
この場を乗り切らなければ
ならないと信じていた。
でも、それは悪あがきでしかなかった。
私には人との温かい関りがなかったから。
共依存の代償として。