オルディアは、混沌のオーラに包まれていた。

大通りに居るものは、しゃがみ込み発狂。

裏通りを覗いてみれば、天を仰ぐ若者。

各々の家に至っては、カーテンが閉め切られているにも関わらず、荒れ狂う声。割れる窓。何も知らず走り回る子供。とにかく滅茶苦茶だ。

「どうなってんだ・・・・・。 こりゃ。」

鷹野がいつも以上に間の抜けた顔をして呟いた。

「本当だな。 どうにかしなければ。」

「でも、どうするの?」

「・・・・・・。」

会話が途切れても、街は叫び続ける。

早くも、道路が混み始めた。

「車なんかに乗って、何処へ行くつもりなんだろうな。」

「外に出ないと、やってられないのだろう。」

――――これがオルディア?

鷹野は心の中で、嘆いた。

そして左拳を握りしめ、地面を殴りつけた。

「おいお前ら! 邪魔だ邪魔だ!」

後ろに、車の列ができていた。

――――だから、何処へ行こうっていうんだよ?

何も罪はない街の住民に、苛立ちさえ覚えていた。


「こんなに早く、行動に出るとは。」

「銀河中、いや宇宙中が大混乱だぞ。」

「どうする? ガラフ支部長。 いや、作戦本部長。」

ガラフは、頭を抱えて座っているしかできなかった。

今や、あの通信が行き届かなかった地域にも噂が広まっていた。

「とりあえず、あの通信の通信元が分かり次第、会議を開く。」

「・・・・・。」

「では臨時会議、解散。」

幹部たちは、重い腰をゆっくりと上げ、足早に会議室を出た。

その波に逆らうように、鷹野が入ってきた。

「おぉ鷹野。 ・・・・・どうだった。」

「滅茶苦茶さ・・・・・。 人も街も。」

「そうか。 そうだろうな。」

鷹野は、ガラフの向かいに座った。

そして、長く深い沈黙が続いた。

15分程過ぎると、1人の研究部隊員が入ってきた。

「失礼します。 あの、ガラフ隊長。」

「何だ?」

「通信元が割り出されました。」

「何!? 本当か?」

「はい。 しかし・・・・・。」

彼はかなり深刻そうな顔をしている。

彼の話は、実に興味深いものだった。

まず、通信元はアテールから2000光年程離れたブラックホールの内部。

そのブラックホールは以前、モンステルが吸い込まれていったものだった。

つまり、あのモンステルは敵により回収されたのだ。

そして、通信に出てきたあの男。彼は、アトランティスの親友兼パートナーの、カテジナ・ウォンツだったのだ。

「つまり、あの組織の首謀者はカテジナ・・・・・。」

「そうとも限らん。」

「え?」

「アトランティス。 彼が絡んでいるかもしれん。」

「アトランティスが? 彼は死んだはずじゃ・・・・・?」

「死亡原因は?」

鷹野は、少し俯いた。

「えっと・・・・・あ! 巨大ブラックホールに戦艦ごと飲み込まれた!」

「そうだ。 アトランティスが絡んでいる可能性は十分に有り得る。」

「・・・・・・じゃあ。 うちの父さんも・・・・・。」

「なくはないな。」

――――くそジジィ! なにやってんだよ!

鷹野は汗で湿った髪を、無造作に掻きあげた。

「よし。 臨時会議を開く。 お前は、UGUの8割の戦力をオ・セカンド銀河系に集結させろ。」

「・・・・・・了解。」

鷹野は走った。

込み上げる想いを抑えきれず、指令室にたどり着くまでに4回も吠えた。

そして、指令室。

「こちらアテール作戦本部。 聞こえますか。」

「聞こえます。 どうぞ。」

「UGUの8割の戦力をオ・セカンド銀河系に集結させてください。」

「え!? それはできません。」

「作戦本部長命令です。 至急お願いします。」

そう言って、無線を切った。

鷹野は父、豪機のしたことに腹を立てていた。

しかし、豪機が生きていることに喜びを感じた。

――――やっと復讐できる。あいつに。



第二部 襲撃編 完

「オルザニカール」と名乗る集団が攻めてきた日から2日が経っていた。

アテールの地下基地は、瓦礫をやっと除去したところだった。

基地の隊員たちは、彼らの目的を探っていた。

「一体、目的は何なのか? 正体は? どこから来たか?などの疑問点を

早急に探ってくれ。」

「了解。」

「では解散。」

ガラフの言葉で、支部の幹部たちが各々部屋から出て行った。

ガラフや鷹野は、あの事件から一睡もしていなかった。

「何なんだったんだろうな? あれは。」

やっとさっき、状況を把握した鷹野が呟いた。

「全然わからん。」

と、ガラフが答えた。

いや、そうとしか答えられなかった。

「また奴らが動くのを待つしかないのか・・・・・。」

「だろうな。」

「じゃ。 またあとで。」

そう言うと鷹野は、会議室から出て行った。


それから、また更に5日が経った。

まだオルザニカールは動かないようだ。

「・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」

地下基地の修繕も最新技術のおかげでほぼ終わった。

鷹野、ガラフ、福崎、そして開城院は指令室で眠っていた。

「・・・・・おっと、そろそろ時間か。」

一番最初に目覚めたのは開城院だった。

そして、ガラフと鷹野に声をかけた。

「隊長。 支部長。 会議が始まりますよ。」

「ん? あぁ・・・・・。」

2人はソファから起き上がった。

「そいえば、隊長って呼び方やめてくれよ。」

「え? なぜだ?」

「なんか堅苦しいからさ。 そういうの苦手なんだ。」

「了解した。 じゃあ、なんて呼べばいいんだ?」

「ん~・・・・・。 タカっちでも、劉ちゃんでも。」

「なら、鷹野でいこう。」

「ちぇ。 面白くねぇな。」

開城院は、鷹野を軽くからかっているようだ。

「そんな話してる場合じゃないぞ!」

「あ そうだった。」

2人が会議室に向かおうとしたその時だった。

突然、オペレーションモニターに映像が流れた。

「我々は、オルザニカール。 ニンゲンを憎むモンステル軍団だ。」

「な! おい! 他の画面にも映せ!」

「我々の目的は1つ。 世界をモンステルのものにするのだ。」

映像にニンゲンらしき姿が現れた。

「この1ヶ月の間に、全宇宙を我々のものにする。 以上だ。」

すると、映像が次第に暗くなり、やがて消えた。

「これはマズい。 全宇宙に流れたようだ。」

「え? じゃあ、星民が混乱するんじゃ・・・・・。」

「あぁ。 早く処置をしなければ!」

そう言うと、すぐさま部屋から飛び出し、どこかに向かって行った。

「俺達も何かしたほうがいいよな?」

「そうだな。 オルディアに向かおう。」

そして、3人はいつも通り魔法陣に入って行った。

いや、開城院は初めてだった。

ちょうどその頃、全宇宙は混乱の渦に巻き込まれていた。

鷹野はフェニキスの中にいた。

アースを出て、アテールの基地に戻るところだった。

「あいつ、背伸びないな・・・・・。」

あいつとは妹、結のことだ。

アテールの衛星軌道上を外れたところで、ワープモードに切り替えた。

フェニキスは静かに消えていった。




第一ポートを出た鷹野は、フェニキスから降りずそのまま基地に向かった。

「さて、隊長がいなくて退屈だろうな。 もうすぐ帰るぞ。」

基地に向かう途中、いきなり地上から何かが飛んできた。

旧型のモンステルだった。

「くっ! 開城院から連絡が来てないぞ? どういうことだ。」

フェニキスを急降下させ、道端に着陸させた。

「よし。 デビュー戦と行くか。 鳥型ならこいつだ!」

そう言って、魔法陣を出現させた。

「行け! ヴァルコン!!」

そして、巨大な魔法陣から更に巨大な真紅の鳥が現れた。

「旧型にお前を使うのはどうかと思うけど・・・・・。」

「グルルルル・・・・・。」

鷹野の言葉とは裏腹に、ヴァルコンは獣のような声を出し、早くも臨戦態勢に入っていた。

「お! やるか!」

その言葉を聞き終わるや否や、モンステルに急接近した。

モンステルは迫力に押されたのか、身動き一つ取れなかった。

そして、相手の首を咥え、ヴァルコンは地面に叩きつけた。

モンステルは2度と動くことはなかった。

「凄いじゃないか! 一撃でやっつけるなんて!」

ヴァルコンは、鳥のくせにまんざらじゃない顔をしている。

「よし。 これから頼むぞ!」

そう言うと、魔法陣に戻した。

「しかし、開城院の連絡もないのにモンステルが・・・・・。 しかも、こんな人の居ないところに・・・・・。」

嫌な予感が、鷹野の胸をよぎった。

急いでフェニキスに乗り込み、基地へ向かった。



「何だ・・・・・。 このありさまは・・・・・。」

基地は、ほぼ壊滅状態だった。

指令室に向かう途中、まだ息のある戦闘員を見つけた。

「どうなってるんだ!? これは?」

「隊長が出ていってすぐに、オルザニカールと名乗るモンステルの集団が・・・・・。」

「モンステルがそう名乗ったのか!?」

「いえ。 ニンゲンも何人か・・・・・。 くはっ・・・・・!」

「おい! 大丈夫か!!」

「・・・・・。」

鷹野はゆっくりと立ち上がった。

そして、指令室に向かった。

指令室も今まで歩いてきたところのようにほぼ壊滅状態だった。

しかし、息のある者が、5,6人いた。

「劉機!!」

「マイ! 大丈夫か!」

「うん。」

「開城院は?」

「無事よ。」

開城院は、オペレーションシートにうずくまっていた。

「鷹野・・・・・。」

「大丈夫か?」

「あぁ。 すまん。 俺が不甲斐ないばっかりに・・・・。」

「何言ってんだよ。」

「とりあえず、ガラフ隊長、いや支部長か。 連絡しよう。」

ガラフは、連絡してから、20分もしないうちにやってきた。

そして、4人と生き残った部隊員は、指令室に集まった。

辺りは、もう薄暗くなってきていた・・・・・。

この日は異様に多かった。

モンステルが6度も襲撃してきたのだ。

しかも、その中の2度は新型モンステル。

今度は、魚型と鳥型だった。

「どう考えてもおかしいよなぁ・・・・・・。」

隊長に昇格した鷹野は、たいして良くない頭をフル起動させた。

最近は、襲撃回数が目に見えて増えている。

更に、出現するのは突然で、ニンゲンが多い場所。

意図的としか言えない出現方法だった。

「解析によれば、昨日倒し損ねたモンステルはブラックホールに吸い込まれたそうだ。」

「手がかりなし・・・・・か。」

ここのところ、サモンビースト「ハルバード」しか召喚してないので、ハルバードが戦闘不能状態になってしまった。

「あいつを連れてくるしかないかな・・・・・。」

あいつとは、惑星アースにある鷹野の牧場で飼っているサモンビーストだ。

「よし。 ちょっくら行ってくる!」

「わかった。 基地のことは任せといて。」

そして、魔法陣からフェニキスに乗り込んだ。


「アースに帰るのは久しぶりだな。」

アースは比較的穏やかな星だ。

見た目は似ていても、アテールとは大違いだ。

鷹野は牧場内に着陸させた。

「あ! お兄ちゃんお帰り!!」

降りたところに妹の、結が駆け寄ってきた。

この牧場は元は鷹野のものだったが、今は鷹野の叔父のもので、結が営んでいる。

「急にどうしたの?」

「ハルバードが弱っちゃってな。 あいつを連れに来た。」

「OK! 今連れてくるね。」

そう言って、小屋というには大きすぎる飼育小屋に入っていった。

なかなか、出てこないので様子を見に行くと、かなり手こずっているようだ。

あいつ、はハルバードの5倍以上あるのだから仕方がない。

鷹のような大きな翼に、不死鳥のような炎を纏っている。

「おい! ヴァルコン! おとなしくしろ。」

ヴァルコンというのが名前らしい。

鷹野が声をかけるとすぐさまおとなしくなった。

「やっぱお兄ちゃんはすごいや。 この子だけは私に懐かないのに。」

「だろ? 少しは見直したか?」

「うんうん。 あ、あの子も連れていく?」

「3人はきついけど・・・・・連れていくか。」

鷹野は、サモンビーストを「匹」ではなく、「人」で呼んでいる。

サモンの能力を持つものはかなり珍しい。

鷹野の父、豪機もその一人だ。

鷹野が鳥型に対して、豪機は龍型だった。

「オーストリック! 来い。」

今度は、ダチョウとニワトリを足して2で割ったようなサモンビーストが出てきた。

2匹、いや2人のサモンビーストを魔法陣に入れると、家の中に入り、

安息の時間を過ごした。

ガイガンの襲撃から早3日。

ここ2日は新型モンステルは出ていない。

だが、旧型のモンステルが宇宙から飛来してきたのだ。

鷹野達は、そのモンステルには免疫を持っていたので、難なく倒せた。

「宇宙から、旧型が飛来してくるのは、どう考えてもおかしい・・・・・。」

この二日間、ずっと頭を悩ませていたのは開城院だ。

「開城院さん。 解析が終わりました。」

「そうか。 見せてくれ。」



時は3日前にさかのぼる。

「何で隊長がここに?」

鷹野と福崎の興奮がおさまったところで鷹野が聞いた。

「フフフ。 フフフフフフ。」

ガラフが不敵な笑いを浮かべた。

「何だよ。 気持ちワリ―な。」

「すまん。 いいことがあったのでな。」

「何々? 教えて!」

福崎が興味津津に尋ねた。

「すまんが、福崎は関係ない。」

「・・・・・あ、そう。」

福崎は幽霊のように部屋から出て行った。

「で? いいことって?」

「俺は、今日から隊長じゃない。」

「え!? やめんの?」

ガラフが微笑んだ。

「俺は、今日からマンチェス支部長に就任した。」

鷹野は一瞬状況を飲み込めなかった。

しかし、次の瞬間には驚きのあまり声が出せなかった。

「ハハハ。 驚き過ぎだろ?」

「イヤイヤイヤイヤイヤ。」

鷹野は、2回深呼吸をした。

「じゃあ、俺達の隊長は?」

「あぁ。 俺の推薦で・・・・・・お前だ。」

「・・・・・・・・・・・・・・。  ん? 俺?」

「あぁ、そうだ。 用はそれだけだ。 じゃ。」

ガラフは部屋から出て行った。

「俺ねぇ・・・・・。 あ、俺か。」

鷹野は、何度も自問自答した。

そして、2時間びくともしなくなった。



「まさか、俺が隊長とはねぇ。」

時は戻り、指令室。

「ホント。 開城院さんかと思った。」

「・・・・・。 お前時々無神経だよな。」

「え? 何が?」

福崎は、確かに天然で無神経なところがある。

「さぁて、お仕事ないかな~。」

そう呟いたとき、もう聞き慣れたサイレンが鳴った。

「お。 タイミングいいな。」

「よし。 行って来い。」

開城院の言葉を聞き終わる前に二人は、魔法陣へと消えていった。

「ふっ。 せっかちな奴らだ。」

そう言って、開城院はオペレーションシートへ座った。