ロングステイアドバイザーの「WORLD CUP日記」 IN 南アフリカ-サッカーシティS
ロングステイアドバイザーの「WORLD CUP日記」 IN 南アフリカ
突貫工事中の決勝の舞台となる「サッカーシティスタジアム」





Waveとブブセラ(鳴り物)で盛り上がるポートエリザベススタジアム                                           




 「スリータイムス・・・・」。突然、英語ガイド兼ドライバーのデイビットが呟き、指さした先には、スーベニアショップでよく見かけた書籍が並べられていた。


 「Long Walk To Freedom」。母国の英雄「Nelson Mandela」の著書(自伝)であつた。「自分は3回も読み返した。彼は偉大だ、何度読んでも感動する」と誇らしげに語る様は、恰幅が良く、肌の色も白人と変わらない彼には、不釣り合いにも感じた。


 そんな彼と行動を共にしたのは、南アフリカ最大の観光地「ケープタウン」。現在、リニューアル中ではあるが、W杯の玄関口として過去の開催国にも見劣りしないモダンなエアポートを後にすると、間もなくこの国の現状を目の当たりにすることになる。エアポートからのフリーウェイ沿いに雨風だけを凌げるだけのトタン屋根の集落が広がっている。某万博開催国のような目隠しもされずに晒された「スラム」は黒人貧困層の居住区であるという。近くにもカラードと呼ばれるオランダより入植したボーア人と黒人・原住民・アジア系との混血人種の貧困層の居住区もあり、アパルトヘイトとは裏腹に貧困層の生活は決して変わっていないと聞く。後者の出身であると告白してくれた彼のように、努力しチャンスを掴んだ者もいる一方、残念ながら貧困から脱却出来ずにいる層も数多く存在するのが現実のようである。


開幕を間近に迫った南アフリカ、約2週間の単身視察による現地治安情報および個人旅行での手配方法と安全な滞在方法をお届けします。

 


ロングステイアドバイザーの「WORLD CUP日記」 IN 南アフリカ-ケープタウン浮浪者

ケープタウンのホテル前で物乞いをする女性




ロングステイアドバイザーの「WORLD CUP日記」 IN 南アフリカ-ケープタウンスラム街




                                         

                                          ケープタウン空港近くに広がるスラム街



南アフリカは、どこも危険 ?


滞在中、「南アフリカは、ロングステイや移住などにはとても適しているのではないかと思います」という言葉を耳にした。驚くことに邦人の保護・支援をミッションとしている大使館・領事の言葉である。勿論、責任ある立場から「危険なエリアには絶対近づかないことが前提です」という条件付ではあるが、ちょっとしたサプライズであった。


 世界一番危険な国「南アフリカ」、または世界一治安の悪い都市「ヨハネスブルグ」という話を耳にした方は多いと思う。事実、ヨハネスブルグではガイドに頼んでも決して近づいてくれないダウンタウンエリアや、欧米諸国からの観光客の集まるケープタウンにおいても犯罪率がヨハネスブルグ並に高い貧困層エリアが存在する。


 在ケープタウン日本領事館で入手したケープタウン警察の「犯罪白書」によると、人口10万人当たりの年間殺人件数は60名超。しかし、この統計には相反する数値が混在していることが分かる。観光地や白人居住区などの「安全地帯」は同人口当たり年間12名程度と先進国並みであるのに対し、黒人・カラード(混血人種)の居住区では同300名を超えるなど日々事件が発生している。つまり、「近づいてはいけないエリア」は極端に危険なのが南アフリカという国なのである。


 また、一方でヨハネスブルグであればサントン地区という高級ホテル街やサンシティ等の郊外リゾート、その他インド洋沿岸都市にも、リゾートホテルの集中しているエリアが散在している。大使館領事よりリタイヤ後の永住地として人気があると紹介された「ガーデンルート」(サムライブルーのキャンプ地ジョージもルート内)などは、その代表格である。


 しかし、安全と言われるエリアにおいても、絶対的なものではなく、高級ホテルやリゾートホテルはすべてエレクトロニック・フェンス(高圧電流柵)に覆われ、ヨハネスブルグ以外でも入口で銃を携えた警備員が24時間常駐している。ヨハネスブルグでは、深夜、窓の外からパトカーのサイレン音も絶え間なく聞こえてくる。つまり、どんなに安全なエリアであっても夜はすべて危険エリアに変貌するという理解が必要だ。滞在中、不思議に感じたことの一つが、街中で歩いている人が極端に少ないことであった。ガイドとの会話の中で、現地住民は無防備で歩くなどということはあり得ず、市街での移動は全て車を使うのがこの国の常識なのである。


 また、ある日本人会の事務局の方の話によると、ヨハネスブルグで一番安全と呼ばれ、警備員が多数警護しているサントン地区の「ネルソン・マンデラスクエア」というショッピングエリアにおいても、強盗は発生しており、ある大使館員などは任期中に4回も強盗の被害にあったと言う。筆者も滞在中、直接危険なアクシデントには巻き込まれなかったものの、誤って薄暗い路地に迷い込んでしまった時などは、突き刺されるような視線とともに、人影が背後に集まる気配など、今まで訪問した国々ではなかった「身の危険」というものを感じたのは初めてであった。