朝日を横目に、
海辺をジョギング。

打ち寄せる波の音と、
砂を噛む靴の音が、
規則正しいリズムを生んでゆく。

荒い息を静めようと、
防波堤に腰を下ろし、
目を閉じて一息つく。

耳の奥、
身体の隅々から、

とくん

とくん

脈打つ音が聴こえてくる。


寝転んだまま、
視線を向ける。

朝日を浴びて、
黄金色に染められた、
若々しい松の木々。

そして、防波堤の上に転がった、
大きな白い石の上を、
ゆっくりと歩む一匹の蟻。


自分が今、ここに生き、
命を営んでいる意味を、

波風に煽られて、
腰を曲げながらもなお、
すっくと立つ松に、

向こう側が見えないほど、
大きな岩の壁を、
ただ黙々と登る蟻に、

今、ここに生きる命に、

教えてもらった。



木の芽や花の蕾、
風の匂いや空の色、
そして、虫や鳥の声。

春を待つ命たちの息吹きを、
そこここに感じながら、
朝のジョギングを楽しむ。

すれ違う人と、

「おはようございます」

そして「今年も一年…」

そんな挨拶もまた、清々しい。


今日も一日、
笑顔で、前向きに。
おそらく日本中が、
「命」や「絆」、
そして「善く生きること」について、
深く深く考え、
思いを行動に変えた一年。

互いに助け合い、
人と人が「つながる」こと、
そして、
生まれくる子どもたちのために、
今を生きる自分たちが、
未来に「つなげる」ことが大切。

そんなことを思いながら、
じっと掌を合わせる。

この季節、
帰郷のときに、
いつも眺める景色がある。

それは空から見下ろす、
一面の雪景色と、
その白地に点在する、
ドット模様の赤や青のサイロ。

飛行機が高度を下げはじめ、
雪原にくっきりと影が映る頃、
1つ、2つと、サイロが現れる。

それを無意識に数えながら、
少しずつ、けれども確かに、
故郷に帰ってきた実感が生まれる。


「ただいま」

「おかえり」

心の中で、つぶやく。


予約していたお気に入りの席。

3方を囲む大きな窓硝子、
やや広めのアンティークテーブル、
キャンドルと銀食器、
緩やかに流れるジャズピアノ。

食事を、会話を、
雰囲気を味わいながら、
ふと外を眺める。

点滅を繰り返すビルの屋上の赤、
イルミネーションの青、緑。

街灯の橙の下を行き交う人が、
心なしか足早に見えるのは、
きっと、
寒さのせいだけではないのだろう。

プレゼントを抱え、
幸せと愛を温めて、
家路をゆくのだろう。


サンタクロースとルドルフの、
鈴の音が聴こえてきそう。

そんな夜の静寂に、
耳を、心を、すましてみる。