2度目の乳癌治療を始めるのは本当に嫌だった。
治療に伴って始まる沢山の嫌なことが嫌だった。
若い医者から、治療方法はたくさんあるから大丈夫ですよ、と励まされたが、その治療自体が怖かった。
嫌だなって思っていたことのうち、ほとんどが2度目の治療中にも実際に起こった。
治療が始まる前は嫌だな嫌だなって考えていたけれど、始まってしまうと腹が据わる部分もあった。
仕方ない。耐えるしかない。
2度目だから、経験者だから、慌てずに済んだこともあった。
辛い治療を大変そうに見せずにスマートに頑張っている人に出会った。
周りへの説明もとても普通で自然で、自分との付き合い方も力が入ってなくて、こういう戦いかたをする人もいるんだと新鮮に感じた。
彼女と話すと肩に力が入り過ぎている自分や、大袈裟に戦っている自分に気づいて、誰しも病気に掛かるんだから、大した事じゃないのかも、と思えた。
一度目の治療の時(右側)は、抗がん剤を7月に始めて、翌年の5月頃まで、術前と術後併せて18本やったので、長くてしんどい日々だった。
季節が一巡していたんだなぁ。
かつらも誰にも絶対ばれたくなくて、かなり頻繁に被っていた。
そして病気の事を調べたり、眠れなくなったり、終わりを意識したり、一生懸命だった。
今回(左側)は抗がん剤は4本だけ、抗がん剤治療は三ヶ月で終わった。
かつらもばれてもいいさ、快適な方を選ぶのさ、という気持ちで、ほとんど付け髪と帽子で過ごしている。
そしてこの先のことはほとんど考えていない。
心配しても、しなくても、お構いなしにある日突然治療が再開してしまうことを経験したから。
考えて備えるタイプなら考える価値はあるが、考えて不安に駈られるだけなら、考える価値はない。
しこりの大きさは左右でほとんど同じだったので、治療がこれだけで終わるのが信じられなかった。
治療が短い期間で終わったのは、FECをもう使えないのと、リンパにいってなかったのと、術前に抗がん剤をやらなかったせい。
しこりの顔つきがどうだとかいうのは関係なく、遺伝性で再発リスクが高そうだから、選択肢を与えられず両胸とも全摘。
両胸が無くなったことは、驚く程ショックではない。
大きめの胸が片方だけ残っていたときのアンバランスな体よりも、今の体の方が気分的に受け入れ易い。
片胸の頃のうつ伏せの時に体が左右に妙に傾く感じや、温泉で首から掛けたタオルの不自然な凹凸や、大きい片胸のために、大きな偽乳を着用するのや、そういうのが鬱陶しかった。
今は2サイズ小さい偽乳パッドを両胸に使っている。
以前よりきゃしゃに見えるかしら?
そしてもう乳腺が無いから乳癌になることはない、という安心感は大きい。
胸にしこりを発見した時の、冷や汗が出るあの嫌な気持ちを経験することはもう2度とない。