夫が体調を崩したのは、定年後の穏やかな日々に慣れたころでした。
朝の散歩から帰るなり、「少し胸が苦しい」と言い出し、
そのまま病院に駆け込んだのです。

幸い軽い狭心症で、大事には至りませんでしたが、
その日から、私の中に「健康はいつまでも続くものではない」という実感が生まれました。

それまでの私は、夫の健康を“当たり前”と思っていたのかもしれません。
でも病気をきっかけに、夫婦の関係が少し変わりました。
それは、「助け合い方を学ぶ」という変化です。

初めのうちは、私が何でもやってしまおうとしました。
食事の管理、薬の確認、通院の付き添い――。
けれど、気づけば私自身が疲れていたのです。

そんなとき、地域包括支援センターで相談を受けた職員さんの言葉が心に残りました。
「ひとりで支えようとしないでください。夫婦で“支え合うチーム”になりましょう。」

それからは、夫にも役割を持ってもらいました。
自分で血圧を測り、体調を記録する。
薬を飲む時間をメモに書いて管理する。
“やってもらう側”から“自分でも守る側”へと、少しずつ変わっていきました。

病気はつらい出来事だけれど、同時に夫婦を深くつなぐチャンスでもあります。
お互いに「ありがとう」と言える関係。
心配よりも信頼で結ばれる関係。

支え合いは、相手を思いやる優しさと、自分を守る冷静さの両方が必要です。
病気を通して見つけたのは、“ふたりで生きる”という意味でした。