羊のチリン、狼となる。
「チリンの鈴」

やなせたかし原作・脚本作品。
『ある牧場で育った子羊チリンは、秋の終わり頃の夜、狼のウォーによって母親を殺された。
チリンは牧場を飛び出し、ウォーに復讐するためにウォーの住む岩山へと向かった。そこでチリンは、強くなってウォーに復讐するため、あえてウォーに弟子入りを志願した。』
1978年公開。
監督:波多正美。
脚本・原作:やなせたかし。
母の敵を討つために、母を殺したウォーに弟子入り。
この歪んだ設定、今は普通にありますが、この時代からあった事に驚き。
憎くて憎くて仕方ないはずなのに、子供にしてその決断が出来るのはすごすぎる。
この度胸と勇気はすごいですが、それだけでは何も守れません。小鳥の卵すら守れないほど弱い。ただ力を振るうのではなくなく、周りの状況を見て、最適な動きをしなければいけません。
子供に思い知らせるには、描写的にもかなりキツいですが、ちゃんと描いていました。
「自分のせいで…」と思うと辛い。
狼にはなれませんが、ウォーと一緒いて野生を身に着けた事で、チリンは眼光鋭い力強い羊に成長しました。
角は丸くならず、前に鋭く尖っています。その角と突進力は、熊やヒョウも倒せるほど強いです。
そこまでの成長は予想外。
そんなチリンの最後の試練。
これはチリンには出来ませんね。
恨みがあるならまだしも、何もない上に、やったらウォーと同じになりますからね。
さらに、他の羊からのあの目線。羊ではない、何か得体の知らないものを見るような目。
自ら進んでそうなったとは言え、こうなると辛いですね。
強者故の孤独。
後付け野生のチリンには耐えられなかったみたいです。
本当に子供向けなのかと思うくらいに心が苦しくなる作品でした。
食べるために狼は羊を狩るという話がありましたが、なんでウォーは母羊を殺しただけで食わなかったのだろうか。