60歳になった。

めでたい気分はまるでなく、悲しさと焦りがある。

だけどほんのわずかに、吹っ切れた希望のようなものもある。

40年前の1985年、20歳の誕生日に小説を買ってきて読み始めた。当時の私にとって、小説を読むことと音楽を聴くことがライフワークだった。

買ってきたのは安部公房の「砂の女」。

20歳の誕生日だったからか、ちょっと背伸びしての安部公房だった。

砂というシンプルな素材をここまで描くか、という驚きがあった。それ以来、海で砂遊びをするたびにあの作品の砂の感触を思い出す。