恋を失って
人を傷つけて
卒業式が縮小して
祝賀会が無くなって
最後の学生生活が自粛で埋まって
楽しみにしてたライブが延期して
そのライブも中止になって
引越し
そんな私に起こった
自宅の半径300mに
町を一望できる公園があるという偶然の産物
町の夜景スポットを検索して気づいた
これは行くしかない
運っていう言葉、概念は好きじゃないが
なんて運命なんだ!
嫌いな言葉が直感で浮かぶほど心はワクワクした
着ていたシャツをパーカに
昨日履いたスウェットにもう1日仕事を与え
いつものジャケットを羽織る
勢いよく発進した母から鍵をもらった車は
部屋に置き忘れた書類のために
再び同じ道を走った
いつも通り 自分らしいな
でも、悪いことは重なる
何気ない不安から抱く慎重が安全に目的地へ運んだ
夕飯に食べた包み焼きハンバーグに憧れていた子供の頃から育ったこの町を、直前に買った暖かい缶コーヒーと両耳に音楽を流して一望する
夜景が少し遠い、ぼやける
感想は
綺麗だな よりも 目が悪くなったな
だった
心が揺れない
札幌で38階から眺めた贅沢な記憶が
感性を鈍らせた気がする
大人になるんだな
沸き起こらない感動を諦め、口ずさんだ
故郷へのメロディー
離れた街でも大事な友を見つけたよ♪
もう会えなくなるんだな
みんなそれぞれ頑張るんだな
一望していた景色の中に点滅する塔を見てふと思い出す
過去に見た38階から生まれる絶景の向こう、目を凝らして捉えた小さな赤い光
まさしくそれだと気づいた
一生を信じて恋をした女性との贅沢な記憶
あの小さな光が大きく写るこの景色が、遠退いた距離を実感させる
全部僕の前から『遠く』へ行ってしまう
ひとりぼっち
突如訪れる寂しさに異変を感じ、背中に鳥肌がたった
でも、大きな変化はそれっきり
少し拍子抜けしたが、空気は澄んでていい所だった
空気を吸って眺める快晴の夜空
なん億光年前の光が僕を包む
町を包む
地球を包む
人類が生まれる前より
恐竜が 生物が生まれる前より もっと前から
僕よりまだまだ長生きする光
そう考えると自分の生きる時間なんてちっぽけに思える
光が遅れて届くってどんな広さやねん!
逆算しようと広げた宇宙のイメージはあまりの規模の大きさに想像しきれなくて断念した
地球って小さいな
僕、いや私は、明日社会人になる
大人に疲れた時、寂しくなった時
またここへ来るんだろうな
『遠く』を近くに感じれるから
広い宇宙の数ある一つ