Trueman Showという映画の様に自分の人生は、誰かしらが何かしらの理由でコントロールしている
向かいにある家に本当に誰か住んでいるの?
もうキャストが休憩時間に入ったから、誰もいないんじゃ無いの?
なんで教えてもいないのに僕の名前知ってたの?
なんでこんなにタイミング良く現れるの?
あなたもさえも、このセットのキャストなの?
突然降りだした雨は
二人をひとつの屋根の下に呼び込んだ
樹海を表現するかのような濃い緑の海は
遠くから見れば汚れているようなのに
それでも
近寄ってみると
ひきのばされた高いノートがかすれるようにしてできた
儚さと美しさを一面に広げる
こころに沈み込むその色は
嫉妬と安堵を
見るものに
重なり合うようにして 思わせた
ソーニャはその海辺でくつをぬらしながら貝殻を集めていた
オレンジ色に染まる雲の影の下
首をかしげるように反転させた頭で
月の表情を
ずっと静かにうかがうラスコー
屋根は二人を出迎えた
ソーニャは集めた貝殻をラスコーに見せると
ラスコーもまた
雨がふりかかる月の泣き顔を指で示した
ひょっとしたら
この突然の雨がなければ
二人はお互いに会うことがなかったのかもしれない
そんな偶然の出会いをラスコーは悔しがり
ソーニャにはうれしく思えた
海で拾われた貝殻と
見つめられ続ける月
そして二人から雨をさまたげるその偶然の屋根
目の前に広がる海は
そのすべてを理解し
それをいつでも受け入れるかのよう
雨に濡れながら
静かに波をうちかえしていた
海
深く潜れば
底は暗く
目を開けても周囲は暗いだけ
耳を澄ましても何も聞こえない
ダイビングスーツなどに覆われ不自由なだけ
ラスコーは
なぜ人が深海の美しさを求め海に潜るのかがわからなかった
ある日ラスコーは妻を連れて深海に出かけた
手を取り合って底が見えるまで潜った
「あなたはなぜ私をこんなところまで連れてきたのですか?」
妻はラスコーに聞いた
二人だけの暗闇の中
ラスコーは妻が何か自分に話しかけていることに気づいた
しかしラスコーには何も聞こえない
二人で潜っても結局は息苦しいだけ
ラスコーはその後妻と別れた
3年後ラスコーは新しい女性に出会うことになった
ソーニャというその女性は
辺りで噂されるほど心優しい美しい女性
やがて二人はお互いに惹かれあい結婚をするまで話が進んだ
しかし一度離婚を経験したラスコーは
なかなか決心できずにいた
そこでラスコーは結婚する前にソーニャをいつかの海へと連れて行った
息苦しい暗闇の中でも二人だけで強く生きていける相手をラスコーは求めた
3年ぶりに訪れる底は何も変わっていない
暗く 静かで そして 息苦しいだけ
海の底へと深く潜った二人はしばらくお互いを見詰め合う
その時ソーニャはダイビングスーツを脱ぎ捨て
ラスコーの前で裸身をあらわにした
呼吸ができないはずのソーニャは表情一つ変えず
ラスコーを見つめた
ラスコーはソーニャの方へ急いで寄り
右腕で強く抱きかかえ水面へと這い出た
翌春に二人は結婚し 町の人達にも大いに祝福された
しかし彼女を助けてしまった自分にラスコーはいつまでも悩んでいた
自分が彼女を死なせたくないがために 仕方なく彼女を助けたのか
それとも彼女と一緒に助かりたかったから水面へ必死に向かったのか
そんな時いつも自分に言い聞かせた
あの時彼女を助けらることができたのは自分一人だけであったといことを
そう言い聞かせることでラスコーは幸せな生活を保った
そしてソーニャも決してラスコーに告げることなく隠し通した
自分がマーメードであるということを