吾輩はハトである。
名前はつくね。
名付けの親は鈴木大河。
プロマジシャンである。
ご主人が台湾より帰国した。
相も変わらず複雑そうな顔をしておったが
瞳に何かを宿しておった。
吾輩にはそう見えた。
ご主人は帰国してすぐ
打ち合わせや先日の大阪でのショーの報告
来週の出張ショーの準備などに追われておった
ひと段落したところで、台湾でのことを振り返っていたようであった。
ご主人は今回、ゲストコンテスタントとして
アジア最大のマジックの大会
台湾マジックコンベンションに招待された。
結果として、ご主人は賞を受け取るに至らなかったが、ご主人自身はそれを『当然だ』と言ったおった。
曰くは
『賞よりももっと重要だと思ったものに挑戦した。』
とのことだった。
理解に難い発言であるが、ご主人のお師匠の教えを振り返れば納得のいくものであった。
ご主人のお師匠はよく、「賞は重要ではない」と言ったそうな。
それはご主人が賞を取ったときでさえそう言ったそうな。
ご主人は、自身が大切に思っているこの台湾の大会だからこそできた挑戦があったと言うておった。
そしてその挑戦はすこぶる上手くいったらしい。
ご主人はこの台湾の大会にとても感謝をしておった。
『大切なものを思い出した』
と言っておった。
どうやら、お師匠との再会で得るものが大きかったらしい。
ご主人のお師匠はこう説いたそうな。
「賞をとることや魔術を強くすること以上にもっと重要なものがある。大河、お前は自身の魅力を忘れてしまっているよ。もっと丁寧に自分と向き合いなさい」
ご主人は
『たしかに、今回は自分を信用してあげられなかったな』
と、独言ておった。
ご主人は自身の出番が終わったすぐ後に自分に賞がないことを察したようだった。
吾輩の誇るご主人のためにも言うが、会場にはご主人の演技が素晴らしかったと褒め称える人は少なくなかったそうな。
それには世界的に有名なマジシャンらも含まれており、ご主人が憧れておるアラン・クロウという名の魔術師にも絶賛を受けたらしい。
それでも、ご主人は自身を『甘い』と評した。
これから忙しくなる時期だが、ご主人のますますの成長に、吾輩は期待が絶えない。
2019年11月27日
マジシャンのハト
つくね
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