先日、離婚相談を希望する連絡を受け取ったのですが、その中に、概要として、次のような内容が書かれていました。

 

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これまで何人かの弁護士に問い合わせをしてみましたが、1時間の相談時間に財産の把握のヒアリングから始まり、法律では財産分与がどうなる、手続きはこうなるという話だけで、弁護士との関係すらも気持ちの負担になりそうで、弁護士に依頼することを諦めようと考えていました。

そのような中、知り合いから、田口先生に一度相談してみてはと紹介されて連絡しました。

 

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責任重大だなという印象とともに、

どうしてこのような状況が生じるのだろうかと考えるきっかけにもなりました。

 

弁護士としては、法律関係の説明をするのは当然のことといえますが、

弁護士との関係が気持ちの負担になりそうというのは、それだけでは足りなかったことを意味しています。

法律関係とは別の、依頼者と弁護士との間の関係性構築が難しいと感じられたということだと思いました。

 

司法試験では、法律関係は試験科目になっていますが、

人間関係は試験科目ではありません。

 

しかし、弁護士が依頼者とどのような関係を取り結ぶのかということは、依頼者にとって、とても切実な意味を持っているのだと思います。

 

かつては、弁護士は高度な専門的知識を持つ少数精鋭の者であり、権威と力を持つ者として、依頼者に関わっていることが多かったのではないかと思われます。

 

しかし、今の時代、主役はあくまで依頼者ではないかと思うのです。

 

依頼者が自身の人生をよりよく生きていく上でのサポートをするのが、弁護士であると思うのです。

 

専門家と素人、という上下のある関係ではなく、

対等のパートナーとしての横の関係を築けるとき、

依頼者の可能性はより開かれていくのではないかと思うのです。

 

私自身はまだ途上にありますが、

依頼者と深い関係を築きながら事件にかかわることで、

依頼者自身の道を切り拓くサポートができたら、と願っています。

 

なお、その後、この件は受任することになりました。

 

この一件を通じても、学びを深めていきたいと思っています。

 

今日、顧問先の方から、不思議な植物をいただきました。

 

それは、「マザーリーフ」。

 

 

葉を水に浸していると、葉から小さな芽が出てくるそうです。

 

植物の世界の多様性。

 

これから育つのが楽しみです。

「差し芽」ということを知ったのは、1年と少し前のことです。

 

差し芽を試みたオリーブも、ペチュニアも、わずかな枝と1、2枚の葉から、大きく育ってきました。

 

 

枝の一部が根となり、幹となり、元の個体とは別の新しい個体として生長していく様をみて、部分の中に全体が含まれていることを目の当たりにし、本当に不思議に思いました。

 

最近は、「変容」という言葉をよく目にします。

 

かつては、「司法」と「変容」は、なんとなく、異質で、新和性のないようなイメージを持っていましたが、アメリカのミディエーション(調停)の中には、トランスフォーマティブ・アプローチという方式があることを知ったとき、トランスフォーメーション(変容)ということと司法がつながりうるのだと分かり、大きな衝撃を受けました。

 

植物の変化は、事件解決についても様々なインスピレーションを与えてくれるように思いますが、最近、植物の変化、変容ということから大きなインスピレーションを得ていた人の中に、ドイツの文豪ゲーテがいたことを知りました。

 

「長年、精神はよろこばしくも、

自然がいかに生を創造するのか、

探求し、知ろうと熱心に努力してきた。

多様に自己を啓示するのは、永遠の一者。

大きなものは小さく、小さいものは大きい。

すべて独自の仕方で。

たえず変化しながら自己を保持する。

近くて遠い、遠くて近い。

形成し、変形しながら、私は驚嘆して眺めるばかりだ。」(ゲーテ)

 

 

ゲーテは、植物の変化に、「メタモルフォーゼ」という言葉を充てています。

(昆虫のメタモルフォーゼについての研究もしているようです)

 

植物のメタモルフォーゼについて、ゲーテは、

「私の思うに、生物のいかなる考察のさいにも根底になければならず、そこから逸脱してはならない根本概念は、以下のとおりである。生物は自分自身とつねに変わらず、それらの諸部分は相互に必然的関係にあり、機械的なものはいわば外部から構築されたりつくりだされたりはしない。ただし諸部分は外部に対して作用し、外部から規定をうける」と述べています。

 

また、植物のメタモルフォーゼについては、「連続性」ということを意識しており、「植物はいかなる飛躍も行わないので、絶え間ない活動の連続を一つの全体として直観しなければならなくなる」と言っています。

 

事件解決の中でも、連続性ということがあるとともに、解決の主体は依頼者自身であり、外部からの影響がありながら、自身の中で解決を見出していくことが大切であることとつながる見方を提示してくれているように思います。

 

ゲーテのメタモルフォーゼ論は、形態学とつながり、後世にも影響を与えていることを知ると、一歩踏み入れたその先に広大な世界が広がっており、何も知らない自分に呆然と立ち尽くすということをまた経験するのですが、一つ一つ何かしら気づき、自分のものとしていく他ないのだと思います。

 

 

植物の世界は、他者との関係での勝ち負けという相対の世界を超え、自己の生長、発展、変化という絶対の世界を示唆しているように思われ、自己実現ということを考えたときも、様々なヒントを与えてくれるように思われます。

引き続き、関心をもって探求を続けていきたいと思います。

今年のGWはとてもうれしいことがありました。

 

出雲のエレクトーンの先生から、トールペイントの絵をいただいたことです。

 

 

この先生には、小学校1年から高校3年まで習っていました。

 

幼稚園のときに、指一本でメリーさんの羊が弾けたことがうれしくてエレクトーンを習いたいと思ったのがきっかけでしたが、この先生の下で音楽に触れ、以後、中学高校の吹奏楽、大学時代のビートルズ研究会、子どもの幼稚園でのパパママバンドへと、音楽体験がつながっていきました。

 

練習をまじめにする生徒ではなかったのですが、高校卒業後も先生との交流を続けさせていただいており、音楽を好きで居続けられたこと、今も音楽を続けられていることの背景には、間違いなくこの先生との出会いがあると思っています。

 

今年の正月にお会いした後、事務所に飾るトールペイントを描いてくださるというお話があり、私としては、ただただうれしくありがたく思っていました。

 

小学校1年生のときの自分を知る先生。

 

いただいた絵は何物にも代えがたいものです。

 

事務所を一層明るくしてくれる絵で、

事務所を訪れる方にとって、気持ちを和らげてくれる絵であると思います。

 

事務所には、多くの人の心のこもった作品があります。

 

この度、また一つ、心のこもった作品が仲間入りしました。

 

 

この事務所は一人だけでできあがったものではないのですが、

改めて、一人だけではないのだと、心強く感じています。

 

大げさでなくても、自分にできることをささやかに続けていきたいと思います。

おかげさまで、

法律事務所maruは3周年、4年目を迎えました。

 

 

ほっとできる場で法律相談はできないか。

互いの人格が尊重されつつ、人間的なやわらかさのある話し合いを進めていくことはできないか。

自分も相手も納得できる解決はできないか。

 

実験の場、実践の場として、この事務所は生まれました。

 

3年続けてみて、円満解決は一筋縄ではいかないことを痛感しています。

 

厳しく対立する利害、感情。

 

容易には見つからない合意点。

 

依頼者とともに、自分自身も葛藤を抱えながら取り組んでいます。

 

と同時に、

対立重視のアプローチでは絶対に到達しなかったであろう解決も出てくるようになりました。

 

信頼関係の醸成、再構築により、

要求のエスカレーションが止まり、

歩み寄りに向かっていく。

 

争いがなくなり「無風状態」で手続を進めていける。

 

「法律的な結論」以上の譲歩に至る。

 

このような結果が出てくるのは、

「自己理解・自己主張」のベクトルとともに

「他者理解」のベクトルを常に意識していく中で、

事態や関係性が「変容」していくからであるように思っています。

 

3年の歩みの中で見えてきたことも踏まえ、

交渉学、NVC、U理論などの紛争解決学の学びも深めながら、

今年はコーチングも学びたいと思っています。

 

植物や野菜育てから得られる学びも多くあると思います。

 

焦らずに取り組んでいき、

人間理解を深め、

少しずつでも依頼者にとってよい解決につながっていく歩みができれば幸いです。

 

事務所は開設前は何もない空間でした。

 

 

3年前の開設のときから、多くの方の手助けや応援があり、今に至ります。

一人だけではここまで来ることはできませんでした。

 

 

感謝申し上げますとともに、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。