8年前、ひょんなことで彼女と知り合った。
彼女は、偉大なアーティストで、六本木や渋谷、新宿に出没していた。
大物なのに、でしゃばらず、そんなに語らず、それでいて弱いものには心優しく、
まさに大物アーティストだった。
「新宿ゴールデン街で飲みません?」
と彼女から誘ってくれたのに、
あたしは、そのころ、とても勇気がなくて、自分に自信がなくて、
「ごめんなさいね。僕ね、ヘビースモーカーだから」と断ってしまったのだ。
そのころのあたしは、もうすでに禁煙していて、
1日2本くらいしか吸ってなかった(禁煙してねぇー)
心の中では、『行きたい!あなたと酒を飲んだらどんなふうなのだろう。
あたしにとってとても勉強になる人物ということには間違いない』
と心の中で叫び、もがき苦しみ、
瞳を閉じ、
唾液を飲んだ。
あれから、8年。
ひょんなことで、彼女をみかけた。
彼女はとても成長していた。
本の出版、映画の評論家など、いろいろな顔をもっていた。
また彼女が遠い存在にみえた。
だけど、今なら、
「新宿ゴールデン街で飲みません?」って誘われたなら、
「禁煙したし、いいぜ」と言えるかもしれない。
今は、どんなふうにすれば謎めいてるように見えるか、
知ってるから・・・