いつのころだったか。。。


東京でとても激しい雪が降った。


あたしは、とある人物と銀座で待ち合わせをしていた。。。



電車が動いてないとか、


履いてく靴がないとか、服が濡れるとか、


そんな雪のせいにしたくない、


なにがなんでも会いたいと思ってたheと待ち合わせをしていた。



Heは、待ち合わせ時間よりもはるか早く到着している感じだった。


高い鼻の頭を真っ赤にさせていた。


あたしは、雪で濡れた髪と肩を、ハンカチーフでぬぐいながら、


Heの前で笑顔を作った。


Heは、なにも言わず、有楽町マリオンへあたしを導き、


当時流行していた映画を二人で見て、


感動したあたしは、これでもかってくらいの涙を流し、


「これは、頬の上を雪が舞い、そして、暖房で溶けたのね」と、


Heの前で、また笑顔を作った。


どんなに感動する映画を見ても、



けっして感情を表に表さないクールで、スノッブな男だった。


あたしは、鞄のほかに、大きくて重い紙袋を下げていた。


Heは、「なにこれ?」ときいた。


あたしは、にやけながら、「大きめのスニーカー」



と答えた。


Heは、「俺への?」


と目をやや光らせた。


街は、ちょうどクリスマスシーズンだった。


あたしは、首をふり、


「あたしの」と答えると、


Heは、困惑した表情をした。


それが、あたしよりも、大人のHeが、とても滑稽で、かわいくて、愛おしくて。。。


「うちのほう、ぬかるので、途中までスニーカーで来て、


途中でハイヒールに履き替えたのよ」


とケラケラと笑った。


Heは、なにもいわず、納得した表情をみせた・・・



そして、有楽町マリオン正面の、ビルの地下2階の渋めのバーへと、


あたしの肩を抱き、


時間(とき)を忘れるくらい強い酒を飲んだ。


酔いが冷めるころ、


ここは銀座か?と思うくらい、


吹雪になっていた・・・