春・・・なにかはじめなきゃ!
春は、新たな旅立ちの季節だよね。
あたしは、とある有名な学校の門をたたいた。
無料体験レッスンと、カウンセリングを受けに。
受付嬢の若いオネーチャンのあとについて、
せまいブースに通された。
しばらくすると、コーヒーがでてきた。
それからまた待つこと15分くらい。
スーツを着慣れてない、若い男のカウンセラーがやってきた。
「お待たせしてすみません。ちょっと資料をみててください」
それから待つこと15分くらい。
いいかげん、帰ってやろうとしてた矢先、
その若い男のカウンセラーがやってきて、
講座の説明について、くどくどと話した。
あたしはやや疲れてきたが、
若い男の営業スマイルで、
「まだまだお若いですから、チャンスはたくさんありますよ。
僕と一緒にがんばりましょう」
とあたしの瞳を見つめていっちゃってるわけだから、
(がんばっちゃう、がんばっちゃう)
とあたしは内心ガッツポーズをしていた。
そのときは、気合が入っていた。
「では、スケジュールなどみてきますから、しばらくお待ちください」
とカウンセラーは言うと、
またしばらく戻ってこなかった。
待つこと、20分。
あたしは、荷物をまとめて帰ろうとすると、
カウンセラーは戻ってきて、
「今、人気のコースで、みんな春は勉強をはじめようと思ってるんですね。
だから、いちばん早くて、5月になってしまうんです」
「ええー?
あたしは、早く勉強をはじめたいんです」
「でも、他の学校でやるよりも、うちで学んだほうが、半年後はぜんぜん違いますよ」
「ううー」
あたしは、考える人になっていた。
「では、別のコースとかもみてきますから」
といって、カウンセラーはまた、どっか行ってしまうと、
今度は30分くらい戻ってこなかった。
のんきなあたしでも、さすがにきれて、
荷物をまとめ、コートを身にまとい、帰ろうとすると、
「すみません、お待たせしてしまって」
と戻ってきた。
「自宅用のコースもありますし。
分割もききますから」
「あたしは、すぐに勉強がしたいんですね。そんなに間があいてしまうと困ります」
「不満は、それだけですか?あとはなにかありますか?」
と、逆ギレされた。
「ちょっとまた考えて、きます。」
あたしがコートを着ながら言うと、
「人気のコースだから、もうすぐいっぱいになってしまいますよ。
今度きたときは、夏からのコースしか残ってないかもしれませんよ」
とどんどん不機嫌な顔になってきた、カウンセラー。
これはあやしい・・・
「とにかく、また連絡します」
とあたしは、鞄を胸にだき、
逃げるようにすると、
「授業風景だけをみてください」
と脚止めされ、
いったい体験レッスンになってないやろーって感じで、
窓の外からちらりとみた。
パンフとはぜんぜん違う、せまくるしい教室と、おっさんみたいな先生がいた。
「わかりました。また連絡します」
とあたしは、一目散に帰ったのである・・・
でも、門をたたくことからすべてがはじまる。
男の家の門は簡単にたたかないが、
学校の門は、どんどんたたこう。
たたく音が、あたしの人生を変えてくれる、そんな気がしたのだ。